エゼキエル戦争の状況に近付く世界(1)ロシア、イラン、トルコによるイスラエル包囲網の構築が進む

エゼキエル戦争の参加国を示した中東・北アフリカの地図

中東情勢が、旧約聖書のエゼキエル書38章、39章で預言されている「ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)」の状況にますます近付いてきた。聖書ニュース.comでは、開設時から国際情勢がエゼキエル戦争の状況に近付いていることをお伝えしてきたが、現在では預言されている状況にさらに近付いている。

MEMO
エゼキエル戦争の預言については、記事「終末預言を読み解く:ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)」を参照されたい。
国際情勢がエゼキエルの預言に近付いてきたことがわかる歴史的経緯については、以下の記事を参照されたい。

エゼキエル戦争では、以下の連合国がイスラエルを侵略すると預言されており、かっこの中が現在該当すると考えられている国である。

  • ロシュ、マゴグ(ロシア)
  • ペルシャ(イラン)
  • メシェクとトバル(トルコ)

この記事では、上記3国の最近の動静を中心に、エゼキエルの預言していた状況に近付いていることを見ていきたい。

ロシア、イラン、トルコが軍事・経済協力関係を深める

まず注目する必要があるのが、ロシア、イラン、トルコの連携が深まっていることである。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、2024年10月12日に地元メディアに対し、ロシア、イラン、シリアはシリアの領土保全のために協力関係を深める必要があると述べている(ニュースメディア『All Israel News』の記事)。

この記事によると、シリアの首都ダマスカスで行われたイスラエルの空爆について質問されたエルドアン大統領は、次のように答えている。

シリアの領土保全にとって最大の脅威となるこの状況に対し、ロシア、イラン、シリアは、より効果的な対抗措置を取る必要がある。
― “Axis of Ezekiel 38? – Turkish President Erdogan calls for Russia, Iran, Turkey, Syria alliance against Israel,” All Israel News, 13 Oct 2024

“It is essential that Russia, Iran and Syria take more effective measures against this situation, which poses the greatest threat to Syria’s territorial integrity”

エルドアン大統領の言う「対抗措置」とは何かは明らかにされていないが、この3国がイスラエルに共同で対抗する必要があることは明言されている。そのほかにも、ロシア、イラン、トルコの3国は、それぞれの国の間でも連携を深めている。

ロシア・イラン関係

ロイター通信の記事によると、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、2024年8月5日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、イランは「戦略的パートナーであるロシア」との関係を拡大する決意を固めたと語っている。ペゼシュキアン大統領は、ロシアのショイグ国防相とも会談し、「ロシアは困難な時期にイランの側に立ってくれた国だ」として謝意を表している。ロイターの記事は次のように記している。

ウクライナとの戦争が始まって以来、ロシアはイランとの関係を深めており、イランとの幅広い協力関係を築く合意を結ぶ準備を進めているという。
― Guy Faulconbridge and Mark Trevelyan, “Iranian president, in talks with Putin ally, calls for expanded ties with Russia,” Reuters, 5 Aug 2024

Russia has cultivated closer ties with Iran since the start of its war with Ukraine and has said it is preparing to sign a wide-ranging cooperation agreement with the Islamic state.
「新しい世界秩序」を共に構築

一方、ロシアのプーチン大統領も、2024年10月11日にイランのペゼシュキアン大統領に対し、ロシアはイランとの協力を引き続き重視しており、西側諸国とイスラエルがもはや世界情勢において支配的な地位を占めることのない「新しい世界秩序」を共に構築したいと述べている(ニュースサイト『Breitbart』の記事)。この記事では、両大統領の言葉を次のように引用している。

「今年、両国間の貿易量は増加しており、これは良い傾向です」とプーチン大統領が語ると、「経済的、文化的な観点からも、両国の関係は日増しに強固になっています」とペゼシュキアン大統領が返した。
― John Hayward, “Putin Reaffirms Russia’s Commitment To Iran Against Israel,” Breitbart, 11 Oct 2024

“This year, we are witnessing an increase in the volume of trade between the two countries and its good trend,” he said.
“From the economic and cultural point of view, our relations are getting stronger day by day,” Pezeshkian responded.

この記事からも、両国の蜜月ぶりがわかる。また、両国の協力は、経済・文化の領域に留まらない。

ロシアとイランが軍事協定の締結に向けて動き出す

ロシアとイランは、軍事協定を含む包括的条約の締結に向けて交渉中と報道されている。ロイター通信は、ロシアのラブロフ外相の言葉を引用して次のように報道している。

 「(包括的条約は)地域レベル、世界レベルの平和と安全保障のために、両国が防衛と交易の分野でより緊密な協力関係を結ぶ意思を確かなものとするものだ」とラブロフは述べた。ただし、軍事協力がどのような形になるかは明言しなかった。
 ウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、6月に相互防衛条項を含む同様の名称の「包括的」条約に調印している。米国とNATOによれば、北朝鮮はロシアに約1万人の兵士を派遣しており、ウクライナとの戦争に投入される可能性があるという。
― Dmitry Antonov and Mark Trevelyan, “Russia’s ‘comprehensive’ treaty with Iran will include defence, Lavrov says,” Reuters, 31 Oct 2024

“It will confirm the parties’ desire for closer cooperation in the field of defence and interaction in the interests of peace and security at the regional and global levels,” Lavrov said. He did not specify what form the defence ties would take.
President Vladimir Putin and North Korean leader Kim Jong Un signed a similarly titled “comprehensive” treaty in June, including a mutual defence clause, and the U.S. and NATO say Pyongyang has sent some 10,000 soldiers to Russia for possible deployment in the war.

この記事は2024年10月末時点のものなので、北朝鮮兵はウクライナ戦線に投入される「可能性がある」とされているが、現時点ではすでに実施されている。北朝鮮のように、包括的条約の締結により、イランもロシアと軍事行動を共にする道が開けることになる。

ロシア・トルコ関係

ロシアとトルコは、オスマン帝国の時代から長く対立関係にあった。16世紀以降、露土戦争や第一次世界大戦などで実際に交戦してきた歴史もある。そのような両国が、シリアの内戦をきっかけに親密な関係を築きつつある。

ロシアがシリア・トルコ国境に軍事基地を設置

2024年8月2日、ロシアはシリアとトルコの国境に近いアレッポ北部のアイン・アルアラブに、新たな軍事基地を設置すると発表した。これに対し、トルコは地域の安定化につながると歓迎の意思を見せている。この状況は両国の長年の対立関係を思うと今昔の感がある。

貿易関係の拡大を目指す

トルコのエルドアン大統領は、11月24日にロシアのプーチン大統領との電話会談で、トルコとロシアの貿易を拡大したいという意向を伝えたと『Moscow Times』紙が報道している。トルコ大統領府は、この会談について声明を出し、「エルドアン大統領は、数多くの分野でトルコとロシアの協力関係を拡大し、特に貿易量の拡大を目指す」と語っている。

ロシアとイランは西側諸国から経済制裁を受けているが、トルコが両国に対する制裁の抜け道となる可能性がある。この点も、ロシアがトルコに接近する要因の一つである。

イラン・トルコ関係

同じイスラム教国でもシーア派のイランとスンニ派のトルコは近い関係ではなかったが、イスラエルという共通の敵を通して協力関係を築きつつある。イランとトルコの大使はイラクのバグダッドで会合を開き、イスラエルの軍事作戦でガザ地区の人道危機が進行中であるとし、二国間および地域のさまざまな問題について話し合ったと、イランの『Tehran Times』紙が12月27日付の記事で報じている。

また、イラン外務省のエスメイル・バガエイ報道官は、イスラエルによるガザとレバノンへの攻撃を阻止するため、イランとトルコは引き続き協力していくと10月21日に述べている(トルコ紙『DAILY SABAH』の報道)。同紙では、同報道官の言葉を次のように引用している。

イスラム世界と地域の2つの大国であるイランとトルコは、ガザとレバノンに対する(イスラエルの)攻撃を止めるべく、決然たる意思を持って取り組んでいる。
― “Iran vows continued effort with Turkiye to stop Israeli attacks,” DAILY SABAH, 21 Oct 2024

“The two great nations of the Muslim world and regional powers Iran and Türkiye are working to stop attacks on Gaza and Lebanon with determination.”

イスラエル包囲網の拡大

エゼキエル戦争の参加国と思われている国々の連携が始まっているのは、ロシア、イラン、トルコに限ったことではない。参加国の一つである「プテ」と考えられているリビアと、「クシュ」と考えられているスーダンも、3国との関係を深めている。

リビア

ギリシャの『Kathimerini』紙は、トルコがリビアで勢力を拡大しているとして次のように報道している。

 トルコは、大規模な軍事的プレゼンスと野心的な経済プロジェクトを含む多面的なアプローチを通じて、リビアにおける影響力を着実に拡大している。トルコとリビアの覚書に基づいて、トルコ軍は2019年からリビアに駐留して活動している。
 トルコが主に力を入れているのは、アブドゥル・ハミッド・ドバイバ首相が率いるトリポリの国民統一政府(GNU)に従う勢力の訓練である。
 トルコ政府はリビア沿岸に海軍を常駐させ、2隻の軍艦がトリポリ近海をパトロールしている。同海軍が利用しているのはアブ・シッタ港やシディ・ビラル港などの基地である。
― Vassilis Nedos, “Turkey expands grip in Libya,” Kathimerini, 16 Nov 2024

Turkey is steadily expanding its influence in Libya through a multifaceted approach that includes a significant military presence and ambitious economic projects. The Turkish Armed Forces have been actively stationed in Libya since 2019, following the Turkey-Libya memorandum of understanding…
Turkey’s focus is primarily on training the forces loyal to the Tripoli-based Government of National Unity (GNU), headed by Prime Minister Abdul Hamid Dbeibah…
Ankara maintains a permanent naval presence off the Libyan coast, with two warships patrolling the waters near Tripoli. The naval force utilizes bases such as Abu Sitta and Sidi Bilal ports.

スーダン

スーダンでは、ロシアとイランが影響力を増している。

スーダンにおけるロシアの勢力拡大について、ニュースメディア『Medium』は次のように報じている

スーダンでは、地域対立が激化する中で、ロシア軍がスーダン軍の支援を受けて同国に入ったと報じられている。ロシア軍の2個大隊はポートスーダン市に到着し、ジェベイト市に向かっている。ロシア軍の任務は、(訳注:反政府勢力の準軍事組織)即応支援部隊(RSF)に対抗するため、地元の民兵やスーダン国軍(SAF)に協力することである。ロシア軍がスーダンに進駐したことで、この地域の地政学的状況に地殻変動が起きている。
― Arabella Huntington, “Russian Troops Enter Sudan, Escalating Regional Tensions,” Medium, 6 Aug 2024

In a significant escalation of regional tensions, Russian forces have reportedly entered Sudan with the support of the country’s military. Two battalions of Russian troops have arrived in Port Sudan and are advancing towards Jebeit City. Their mission involves collaborating with local militias and the Sudanese Armed Forces (SAF) to counter the Rapid Support Forces (RSF)… The entry of Russian forces into Sudan marks a notable shift in the region’s geopolitical landscape.

これまでロシアは同国の民間軍事会社ワグネルを通してアフリカでの影響力を拡大してきたが、今回はロシアの正規軍がスーダン入りしたことで新たな段階に入ったと言える。

一方、イランも、同国の代理勢力であるハマスとヒズボラがイスラエルとの戦いで弱体化している今、イスラエルとの代理戦争の新たな拠点としてスーダンに目を付けている。

米国のシンクタンク「Gatestone Institute」は、イランのスーダンでの勢力拡大について次のように報告している。

 イランは近年、スーダンの主要な沿岸都市であるポートスーダンに港を建設しようとしてきた。他国に浸透してテロ組織を支援するイランの戦略は、イラク、シリア、ガザ地区、レバノン、ベネズエラ、イエメンで実践されてきた。この戦略は、政府が弱体化し、政情不安定な地域に進出するという戦略の延長線上にある。この戦略によって、イランは、中東全域での影響力の拡大、イスラエルの破壊、西側主導の世界秩序の崩壊を実現するための新たな戦線を構築しようとしている。
 スーダンに主要な港と拠点を確保することで、イランは2つの目標を達成できる。イスラエルを引き続き「炎の輪」で包囲し、南西の方向から攻撃する新たな戦線を開くことと、紅海を航行する国際貨物船に対するコントロールを強めることである。
― Pete Hoekstra, “Iran’s Newest Proxy: Sudan,” Gatestone Institute, 30 Sep 2024

Iran has, for a while, been trying to establish a port in Sudan’s major coastal city, Port Sudan. Iran’s strategy of supporting and infiltrating other countries and terrorist groups — as it has done in Iraq, Syria, Gaza, Lebanon, Venezuela and Yemen — appears as yet another extension of its strategy of moving into territories with weak or unstable governments to expand its influence throughout the Middle East, to create new fronts for its campaign to destroy Israel and bring down the world order led by the West.
A major port and foothold in Sudan will enable Iran to accomplish two of its goals: to continue encircling Israel in a “ring of fire” by opening yet another front from which to attack the small Jewish nation from the southwest, and to further control all international shipping in the Red Sea.

イランの言う「炎の輪」とは、イスラエルに敵対する諸国の包囲網のことだろう。次の地図を見ると、北のロシアとトルコ、東のイラン、西のリビア、南のスーダンという形で、実際にイスラエルの包囲網が築かれつつあることがわかる。

エゼキエル戦争の参加国を示した中東・北アフリカの地図
エゼキエル戦争の参加国を示した中東・北アフリカの地図

反イスラエル勢力の連帯を呼びかけるイランとトルコ

イランとトルコは、イスラエルに反対して戦うよう全世界とイスラム諸国に連帯を呼びかけている。

イラン

イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、2024年10月27日にイスラエルに対する世界的な「軍事同盟」を呼びかけている。この声明は、イスラエルがイランの主要な軍事施設に対して行った空爆の直後に出されたものである。イスラエルとイランが直接的な軍事衝突に発展したことで、両国の緊張関係は極度に高まっている。『The Washington Times』紙は、ハメネイ師の声明について次のように報道している。

イラン国営メディアによると、ハメネイ師は「今日、最も残虐な戦争犯罪を犯している悪のシオニスト政権に対して、政治的連合、経済的連合、そして必要であれば軍事的連合も含めた、世界的な連合を形成する必要がある」と語っている。この発言は、ガザ地区のハマスとレバノンのヒズボラに対するイスラエルの軍事作戦を指していると考えられている。
― Ben Wolfgang, “Iran’s supreme leader calls for global “military coalition’ against Israel,” The Washington Times, 27 Oct 2024

“A global coalition must be formed, as well as a political coalition, an economic coalition and, if necessary, a military coalition, against the malicious Zionist regime that is committing the most brutal war crimes today,” the ayatollah said, according to Iranian state-controlled media, presumably referring to Israel’s military campaign against Hamas in the Gaza Strip and its attacks against Hezbollah in Lebanon.

イランはイスラエルに最も敵対的な国として知られているが、近年、イランに負けないほどイスラエルに敵対的な発言を繰り返しているのが、トルコのエルドアン大統領である。

トルコ

2024年4月8日、トルコのエルドアン大統領は、イスタンブールで開催された第40回イスラム協力機構(OIC)経済・商業協力常任委員会(COMCEC)の開会式で、イスラム世界が団結して、イスラエルに対するパレスチナとレバノンの人々の戦いを支援することの重要性を次のように訴えている。

イスラム世界が、立場の違いを脇に置いて、パレスチナとレバノンの人々を支援することが非常に重要である。…今日、あらためて、私はパレスチナの兄弟姉妹に敬意を表する。彼らは、あらゆる形の困難、搾取、放棄にもかかわらず、断固として立ち上がり、命をかけて自分たちの土地を守っているのである。
― Muhammed Enes Calli, “Turkish president calls on Islamic world to unite against Israel’s genocide in Gaza,” Anadolu Ajansı, 11 Apr 2024 (Update: 11 May 2024)

​​​​​​​It is of great importance for the Islamic world to put aside differences and support the Palestinian and Lebanese people… Today, once again, I salute my Palestinian brothers and sisters, who, despite all forms of impossibility, deprivation, and abandonment, stand firm and defend their land at the cost of their lives.

イランとエルドアン大統領がイスラエルに敵対的な発言を行うのは今に始まったことではない。しかし、イスラエルのハマスとヒズボラに対する攻撃によってガザ地区とレバノンで人的被害が発生することで、こうした発言に耳を傾ける人々が多くなってきている。しかし、2023年10月7日の奇襲や無差別なロケット攻撃を仕掛けてきたのはハマスとヒズボラの側であることを忘れてはならない。

最後に

2015年5月15日に、エルドアン大統領は次のように発言している。

「残念ながら、われわれイスラム教徒はエルサレムに向かう目的を失ってしまっている。目の水分が凍って盲目になり、エルサレムを求めて高鳴る心は、今では互いに対抗心を燃やし、相争うようになっている」
― Mark Hitchcock, Russia Rising: Tracking the Bear in Bible Prophecy (Tyndale, 2017)

“Unfortunately we the Muslims lost our aim to head towards Jerusalem. The water of our eyes froze, making us blind, and our hearts that were destined to beat for Jerusalem are now instead conditioned for rivalry, in a state of war with each other.”

イランやエルドアン大統領がイスラエルに敵対するのは、イスラム国家が長年支配してきたエルサレムをユダヤ人国家が支配していることが許せないという宗教心がある。必ずしもガザ地区やレバノンの人々に対する同情でイスラエルに敵対しているわけではない。

MEMO
エルサレムの奪還を夢見るエルドアン大統領の過去の発言については、記事「トルコのエルドアン大統領『エルサレムはイスラム教徒のもの』」をご覧いただきたい。

今回はロシア、イラン、トルコを中心としてイスラエルに対する包囲網ができつつあることをお伝えしたが、次回の記事では、イスラエルとロシア、イラン、トルコとの関係が今どうなっているのかを見ていきたい。

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