世界経済フォーラムが描く未来

世界経済フォーラム

世界経済フォーラム(WEF)は、スイスのジュネーヴ州に本部を置く国際機関である。世界の政財界のリーダーが集まり、グローバルな課題について話し合う「ダボス会議」を主催する団体としても知られている。

デンマークの国会議員、イダ・オーケン(Ida Auken)は、この世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」であり、同団体の「都市と都市化に関するグローバル・フューチャー・カウンシル」のメンバーでもある。このオーケンが、世界経済フォーラム(WEF)の寄稿として雑誌『Forbes』に一つの記事を書いている。

新しい共産主義社会を夢想

「2030年へようこそ ― 私は何も所有しないし、プライバシーもない。そして、人生はこれまでにないほどすばらしい(Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better)」というタイトルのオーケンの記事は、書き出しで2030年の社会は次のようなものになると語っている。

2030年へようこそ。私の街へ。いや、「私たちの街」と言うべきでしょうか。私は何も所有していません。車も持っていないし、家も持っていません。電化製品も、服も持っていません。
― Ida Auken (World Economic Forum), “Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better,” Forbes, 10 Nov 2016

Welcome to the year 2030. Welcome to my city – or should I say, “our city.” I don’t own anything. I don’t own a car. I don’t own a house. I don’t own any appliances or any clothes.

何も所有しない社会。オーケンが描く2030年の社会は、共産主義社会にほかならない。しかし、何も所有しないのにどうやって生きているのか。その点について、オーケンは次の段落で次のように説明している。

皆さんには奇妙に思えるかもしれませんが、この街はまったく理にかなっているのです。皆さんが製品だと考えていたものはすべて、今やサービスになっています。交通手段、宿泊施設、食事、日常生活で必要なものはすべて手に入ります。こうしたものが次々と無料になり、結局、多くを所有する意味がなくなってしまったのです。
― Ida Auken (World Economic Forum), “Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better,” Forbes, 10 Nov 2016

It might seem odd to you, but it makes perfect sense for us in this city. Everything you considered a product, has now become a service. We have access to transportation, accommodation, food and all the things we need in our daily lives. One by one all these things became free, so it ended up not making sense for us to own much.

オーケンは、すべて「製品」としてではなく「サービス」として無料で提供されるので、物を所有する必要がないという。WEFの描く未来社会での暮らしは、次のようなものだ。

買い物ですか? それがどういうものなのか、よく覚えていません。ほとんどの人にとって、使うものを選ぶという作業に変化しています。これを楽しいと思うこともあれば、アルゴリズムに代わりにやってもらいたいと思うこともあります。私の好みは、今やアルゴリズムの方がよくわかっているのですから。
― Ida Auken (World Economic Forum), “Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better,” Forbes, 10 Nov 2016

Shopping? I can’t really remember what that is. For most of us, it has been turned into choosing things to use. Sometimes I find this fun, and sometimes I just want the algorithm to do it for me. It knows my taste better than I do by now.

また、この社会では所有物がないだけではない。あらゆるものが無料で手に入る代わりに、プライバシーもない。

私たちの街では、家賃を一切払いません。自分が必要としないときには、誰か別の人が自分の空きスペースを使っているからです。私のリビングルームは、私がいないときはビジネスミーティングに使われています。
― Ida Auken (World Economic Forum), “Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better,” Forbes, 10 Nov 2016

In our city we don’t pay any rent, because someone else is using our free space whenever we do not need it. My living room is used for business meetings when I am not there.

プライバシーがないということは、あなたの情報が政府や社会に筒抜けになるということだ。プライバシーという権利がなければ、政府の監視を逃れる方法はない。

以上はSFのような話だが、オーケンは、世界経済フォーラムのリーダーの一人として、2030年の社会の予測を真剣に語っている。また、世界経済フォーラムは「2030年の8つの予測」という動画で、「あなたは何も所有しない。それでもあなたは幸せ」(You’ll own nothing. And you’ll be happy)と語っているので、オーケンの見方は世界経済フォーラムで基本的に共有されていると考えていい。

個人の財産がない社会はどうなるか

個人が物を所有しないのであれば、誰が所有するのだろうか。共産主義社会では、国家が所有する。個人は、国家から借りて使用することになる。しかし、所有権がなければ、奪い取られても取り返す権利がないことになる。さらに、すべての所有者である国家に逆らえば、借りている物をいつでも奪い去られる可能性があることを理解する必要がある。そのようなことは、歴史を見れば共産主義国家では当たり前に行われてきたし、今も行われていることだ。

米国初代大統領のジョージ・ワシントンは、個人の財産権の重要性を指摘して次のように語っている。

自由と財産権は切っても切り離せません。どちらか一方がなければ、もう一方も手にすることができないのです。

Freedom and property rights are inseparable. You can’t have one without the other.

ワシントンが言うように、財産権のない社会は、自由もない社会になる。聖書を見ても、十戒の第五戒と第七戒で「盗んではならない」(出エジプト20:15)、「…すべてあなたの隣人のものを欲してはならない」(出エジプト20:17)と言われているように、私的所有権があることが大前提になっている。

世界経済フォーラムが描く未来の社会は、決して明るくはない。ディストピア(暗黒郷)と言ってもいいだろう。

監視社会の不安も

オーケンは、世界経済フォーラムが描く社会に自分自身でも一抹の不安を感じているようで、次のようにも書いている。

時々、私には本当の意味でのプライバシーがないという事実に苛立ちを覚えることがあります。どこに行っても登録されます。私の行動、思考、夢は、すべてどこかで記録されています。ただ、それを悪用する人がいないことを望むばかりです。
― Ida Auken (World Economic Forum), “Welcome To 2030: I Own Nothing, Have No Privacy And Life Has Never Been Better,” Forbes, 10 Nov 2016

Once in a while I get annoyed about the fact that I have no real privacy. Nowhere I can go and not be registered. I know that, somewhere, everything I do, think and dream of is recorded. I just hope that nobody will use it against me.

聖書によると、オーケンの不安は現実になる。聖書では、大患難時代に入ると、完全監視社会が完成することが預言されている。

聖書の預言

聖書の黙示録によると、反キリストが支配する世界統一政府では、反キリストの刻印がなければ売ることも買うこともできない完全監視社会が到来する。黙示録13:16~18には、次のように記されている。

16 また獣(反キリスト)は、すべての者に、すなわち、小さい者にも大きい者にも、富んでいる者にも貧しい者にも、自由人にも奴隷にも、その右の手あるいは額に刻印を受けさせた。 17 また、その刻印を持っている者以外は、だれも物を売り買いできないようにした。刻印とは、あの獣の名、またはその名が表す数字である。 18 ここに、知恵が必要である。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。それは人間を表す数字であるから。その数字は六百六十六である。

ただ、このような社会が一朝一夕に出来上がるわけではない。その状況に至るまでに準備期間がある。今は、そのような準備期間にあたる。

聖書が預言する完全監視社会については、預言の解説として記事にする予定である。

MEMO
関連する預言:完全監視社会

参考資料

写真:World Economic Forum (CC BY-NC-SA 2.0)

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