ニュージーランド、オーストラリア政府が「陰謀論者」の通報を呼びかけ

ジャシンダ・アーダーン首相

新型コロナの「パンデミック」以降、これまで言論の自由が守られていると思われてきた民主主義国で、全体主義的な政策を打ち出す政権が増えている。その一例として、ニュージーランドとオーストラリアの例を紹介する。

ニュージーランドの例

ニュージーランド政府は、テロリストとなる可能性のある人物を見つけ出すため、過激思想に影響されている人物の通報を国民に呼びかけ、そのための小冊子を配布している。このニュージーランド政府の動きについて、ニュースサイト『News Punch』は次のように報道している。

ニュージーランド安全保障情報局のレベッカ・キタリッジ局長は、家族や友人が陰謀論によって「過激化」し、テロ攻撃を計画している可能性を示唆する「多数の指標」があると説明している。
キタリッジ氏によれば、「権利を侵害していると解釈される政府の政策」や「政府が実行してきた新型コロナウイルスの感染症対策」に反対する者は、テロリストとして報告し、調査しなければならないという。
― Baxter Dmitry, “New Zealand Demands Citizens Report ‘Conspiracy Theorists’ Who ‘Oppose Gov’t Policies’ as ‘Terrorists’“, News Punch, 17 Dec 2022

Rebecca Kitteridge, director of the New Zealand Security Intelligence Service, explained that there are “dozens of indicators” that suggest a family member or friend has been “radicalized” by conspiracy theories and could be planning a terror attack.
Anyone who opposes “government policies that are interpreted as infringing on rights” or “Covid measures the government took” must be reported and investigated as terrorists, according to Kitteridge.

この政策に関する報道は、次のツイートの動画で確認できる(英語)。

キタリッジ長官は「陰謀論」に影響された人々の通報をうながしているが、ニュージーランド政府が配布している小冊子に直接そう書かれているわけではない。武器の携行や製造を行っている人物への注意など、当然の注意喚起が大部分だ。ただ、次のような警告も含まれているので、警戒が必要であることに変わりはない。

極端な思想は、多くの人々が広く受け入れている見解や信仰からは外れた、社会の片隅に存在する信仰、社会的または政治的信念に基づいている場合があります。過激派は、政府、宗教、社会のあり方を根本的に変えようとしたり、自分たちの思想に基づいた共同体を作ろうと模索していたりする可能性があるのです。
― New Zealand Intelligence Service, “Know the signs ― A guide for identifying signs of violent extremism” (https://www.nzsis.govt.nz/assets/NZSIS-Documents/Know-the-signs.pdf), p.8

Extremism: views on the fringe
Extreme ideologies can be based on faith, social or political beliefs that exist on the fringes of society, outside the more broadly accepted views and beliefs of most people. Extremists may seek to radically change the nature of government, religion or society, or to create a community based on their ideology.

この箇所を読むと、社会の大部分と異なる信仰や政治的意見を持っていることで、危険人物として扱われる可能性があることがわかる。まだ犯罪を犯してもいないし、テロを起こす動きもないにもかかわらず、一定の思想を持っているだけでテロリスト予備軍としてマークされるということだ。これは「思想警察」につながる発想である。

ニュージーランド政府がこのようなキャンペーンを行う動機が不審なのは、この小冊子に次のような文言があるためでもある。この文言は、危険人物を特定する指標をどのように定めたかを説明するセクションに書かれている。

ニュージーランドでは、暴力的な過激派やテロ行為の数が比較的少ないため、これらの指標のいくつかを検証するために、海外で見られた事件を取り上げています。
― New Zealand Intelligence Service, “Know the signs ― A guide for identifying signs
of violent extremism” (https://www.nzsis.govt.nz/assets/NZSIS-Documents/Know-the-signs.pdf), p.10

Due to the relatively low numbers of violent extremists and terrorist acts in New Zealand, we’ve used events seen overseas to validate some of these indicators.

過激派やテロリストの活動が少ないニュージーランドで、このような通報やキャンペーンがなぜ必要なのか。十分な説明は与えられていない。

また、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、新型コロナによる「パンデミック」が発生した初期の2020年に、次のような発言をしている。

私たちは日々、最新の情報をお伝えしていきます。その情報源として、私たちを信頼してください。……私たちの情報以外はすべて受け付けないでください。私たちはこれからも、あなたがたに真実を提供する唯一の情報源であり続けます。
― Jordan Liles, “Did New Zealand PM Jacinda Ardern Once Say, ‘Unless You Hear It from Us, It Is Not the Truth’?“, Snopes, 26 Jul 2022

We will share with you the most up-to-date information daily. You can trust us as a source of that information… Otherwise, dismiss anything else. We will continue to be your single source of truth.

これはSNSで出回っている「偽情報」に対する警告という文脈で語られたものだ。しかし、後ほど見るように、Twitterで「偽情報」として削除された情報の中に、今となっては真実だとわかるものが多く含まれている。政府を唯一の情報源とすることは、あまりにも危険で全体主義的な発想だ。アーダーン首相の発言は、政府の情報統制につながる危険性がある。

オーストラリアの例

オーストラリアでは、クイーンズランド州警察のトレイシー・リンフォード警視副総監が、次のような発言をしている。

陰謀論、反政府、反警察、反コロナワクチン接種の陰謀論者、そしてトレイン一家のような人たちに心当たりがあれば、知らせてください。警察に直接連絡するか、犯罪防止センターを通じて連絡していただきたいと思っています。
― Tony Mobilifonitis, “Senior cop says ‘conspiracy theorists’ should be reported to Crime Stoppers,” Cairnes News, 27 Dec 2022

“As I said if there’s anybody out there that knows of someone that might be showing concerning behaviour around conspiracy theories, anti-government, anti-police, conspiracy theories around anti-Covid19 vaccinations, as what we’ve seen with the Train family… we want to know about that and you can either contact police directly or go through Crime Stoppers.”

発言中に出てくる「トレイン一家」とは、クイーンズランド州のウィアンビラで起きた銃撃事件の犯人を指している。リンフォード警視副総監の発言は、この事件がインターネット上で出回っている「陰謀論」に触発されたものという見解に基づいている。

オーストラリア公営放送SBSの報道(2021年2月2日)によると、このような「陰謀論」の台頭を挙げて、オーストラリア連邦政府は過激派対策として6000万ドルの支出を決定しているという。

ただ、当初は「陰謀論」と呼ばれていたことも、後になって十分な根拠がある情報であったとわかることも多い(新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所起源説など)。Twitter社を買収し、「Twitterファイル」と呼ばれる内部文書を公開しているイーロン・マスクCEOは、次のように語っている。

率直に言って、Twitterについて人々が口にしていた陰謀論は、ほとんどすべて真実であることが判明しました。Twitterに関する陰謀論で真実にならなかったものはあるのでしょうか? 今のところ、すべてが真実であると判明していますし、人々が思っていた以上の真実が明らかになることもあります。

To be totally frank, almost every conspiracy theory that people had about Twitter turned out to be true. Is there a conspiracy theory about Twitter that didn’t turn out to be true? So far, they’ve all turned out to be true and if not more true than people thought.

Twitterファイルが明らかにした情報操作

イーロン・マスクが公開したTwitterファイルにより、Twitter社が行っているとされた情報操作や、政府が情報操作に関与しているという「陰謀論」が事実であったことが明らかにされた。これについて『New York Post』紙は次のように報道している。

バイデン政権のホワイトハウスは、COVID-19に対する立場に基づいて、それぞれのユーザーを他のユーザーの目に触れやすくしたり、隠したりするようにTwitter社に圧力をかけた。最終的に、政策立案者にとって「真実であるが不都合な情報が検閲」されることになった。月曜日(12月26日)に公開された「Twitterファイル」の最新版では、そのように記載されている。
パンデミック時の強制的なキャンペーンは、トランプ政権から始まった。感染爆発の発生初期にパニック買いや「食料品店への殺到」についての記事を取り締まるようTwitter社に要請したことから始まったが、「ワクチン反対派」の除去に力を入れたバイデン政権下で強化されたと、『The Free Press』のデイビッド・ツヴァイグ記者は述べている。
― Jesse O’Neill, “Biden admin pushed to bar Twitter users for COVID ‘disinformation,’ files show,” New York Post, 26 Dec 2022

The Biden White House pressured Twitter to both “elevate” and “suppress” users based on their stances on COVID-19 — ultimately “censoring info that was true but inconvenient” to policy makers, according to the latest edition of the “Twitter files” revealed Monday.
The coercion campaign during the pandemic began with the Trump administration — which asked Twitter to crack down on stories about panic buying and “runs on grocery stores” in the early days of the outbreak — but was stepped up under Biden, whose administration was focused on the removal of “anti-vaxxer accounts,” according to The Free Press reporter David Zweig.

Twitterファイルを発表した記者のデイビッド・ツヴァイグは、次のようにツイートしている。

Twitterファイル:Twitter社はどのようにコロナ論争を不正に操作したか

  • 真実であるが、米国政府の政策に不都合な情報を検閲する
  • 政府に同意しない医師や専門家の信用を失わせる
  • CDC(疾病予防管理センター)のデータを共有するユーザーなど、一般ユーザーをほかのユーザーの目に触れさせないようにする
    THE TWITTER FILES: HOW TWITTER RIGGED THE COVID DEBATE
    – By censoring info that was true but inconvenient to U.S. govt. policy
    – By discrediting doctors and other experts who disagreed
    – By suppressing ordinary users, including some sharing the CDC’s own data

Twitter社にアカウントを削除された人の中には、新型コロナウイルスのワクチンは「感染を止められない。伝染も止められない。ワクチンと思ってはいけない」とツイートしていた元『ニューヨークタイムズ』紙記者のアレックス・ブレンソン(Alex Berenson)がいる。当初は感染予防のためと言われて接種が推奨されていたものの、5回目の接種を受けても新型コロナに感染した尾身茂会長(新型コロナ分科会)の例を見ても、ブレンソンの指摘が誤情報だったとは言えないだろう。そのほかにも、医学の専門誌に掲載されたデータやCDCの出した政府データを引用したユーザーでさえも、政府の見解と一致しない場合は、アカウントが停止されたり、誤情報の可能性があると判定されたりするケースが多数あった(誤情報の可能性があると判定されたツイートには、リツイートやいいねが押せなくなり、情報を拡散できなくなる)。

聖書預言

各国の政府が情報統制に走り、全体主義的になっていく傾向は、聖書預言と一致した流れである。聖書では、終わりの時代には世界統一政府が樹立されることが預言されている。そうした預言の一つであるダニエル7:23では、次のように言われている。

23  彼はこう言った。『第四の獣は地に起こる第四の国。これは、ほかのすべての国と異なり、全土を食い尽くし、これを踏みつけ、かみ砕く。

これは御使い(「彼」)が預言者ダニエルに語った預言である。ここで言われている「第四の獣」とは、終わりの時代に起こる世界統一政府のことである。この政府は「全土を食い尽くし、これを踏みつけ、かみ砕く」と言われていることから、強権的で、暴力的な性質の政府であることがわかる。聖書の預言によると、時代は次第にそのような世界に向かっていくことになる。

MEMO
世界統一政府の預言については、こちらをご参照いただきたい。

参考資料

写真:Department of the Prime Minister and Cabinet, New Zealand (CC BY 4.0)

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