終末預言を読み解く:反ユダヤ主義の高まり

ペトラ(ヨルダン)

聖書では、終末時代が深まるにつれて反ユダヤ主義が全世界に広がっていくことが預言されています。

反ユダヤ主義とは

反ユダヤ主義とは、ユダヤ人に対する言われなき憎悪や差別のことです。反ユダヤ主義というとナチスドイツのホロコーストが代表的な例として知られていますが、反ユダヤ主義は過去のものではなく、今日も存在します。イスラエルにテロ攻撃を繰り返すイスラム原理主義組織ハマスは、1988年に制定したハマス憲章で次のように記しています。

イスラム教徒がユダヤ人と戦い、これを殺してしまうまで審判の日は来ない。その時、ユダヤ人は石や木の陰に隠れる。樹木や岩石は言うだろう。「おおイスラム教徒よ。おおアブダラよ。私の背後にユダヤ人がいるぞ。来て殺してしまえ」1

“The Day of Judgement will not come about until Moslems fight the Jews (killing the Jews), when the Jew will hide behind stones and trees. The stones and trees will say O Moslems, O Abdulla, there is a Jew behind me, come and kill him.”

この言葉は、イスラム教第二の聖典で、預言者ムハンマドの言行録である「「ハディース」の一節です。ユダヤ人であるというだけで「殺してしまえ」というのですから、反ユダヤ主義と呼ぶ以外にありません。この引用文は2017年に改定されたハマス憲章には見当たりませんが、2023年10月7日にハマスが行ったユダヤ人に対する残虐なテロを見ると、この精神は今も生き続けていることがわかります。

公平を期すと、反ユダヤ主義はイスラム教だけでなく、キリスト教の歴史にも見られるものです。キリスト教の反ユダヤ主義的な傾向はカトリック時代から続く伝統ですが、プロテストタントの父と呼ばれるマルティン・ルターも、『ユダヤ人と彼らの嘘について(Von den Jüden und jren Lügen)』という論文で次のように記しています。

第一に、ユダヤ人のシナゴーグに火を放つべきである。……第二に、家も同様に壊し、破壊すべきである。……第三に、祈祷書とタルムードを奪うべきである。……第四に、ラビに死の脅迫を行い、これ以上教えることを禁じるべきである。……第五に、ユダヤ人からパスポートと旅行の特権を完全に取り上げるべきである。……結論として、領内にユダヤ人を抱える親愛なる諸侯や貴族たちよ、もしこの助言があなた方に合わなければ、もっと良い助言を見つけてほしい。そうすれば、あなた方もわれわれも皆、この鼻持ちならない悪魔のような重荷、ユダヤ人から解放されるだろう。

First, their synagogues should be set on fire…Secondly, their homes should likewise be broken down and destroyed…Thirdly, they should be deprived of their prayer books and Talmuds…Fourthly, their rabbis must be forbidden under threat of death to teach any more…Fifthly, passport and traveling privileges should be absolutely forbidden to the Jews… To sum up, dear princes and nobles who have Jews in your domains, if this advice of mine does not suit you, then find a better one so that you and we may all be free of this insufferable devilish burden – the Jews.

ルターは、前半生では反ユダヤ主義に反対する立場でしたが、この論文でわかるように、後半生では反ユダヤ主義に転じています。

反ユダヤ主義は「置換神学」という形でキリスト教神学にも受け継がれています。置換神学とは「旧約時代のイスラエルは神に見捨てられ、新約時代は教会が新しいイスラエル(霊的イスラエル)となった」という教えです。置換神学は、聖書でイスラエルに対する祝福が約束されていると「イスラエル」を「教会」と読み替え、イスラエルに対するさばきが宣告されているとそのまま「イスラエル」と読む、首尾一貫しない教えです。現在でも、多くの教会が置換神学に影響されているので、知らず知らずのうちに反ユダヤ主義的な考え方をしているクリスチャンも多いと思います。

また、日本も反ユダヤ主義と無縁ではありません。日本では、杉原千畝樋口季一郎などユダヤ人難民を救ったすばらしい例がある一方で、ナチスドイツと同盟を組み、悪名高い偽書『シオン賢者の議定書』などを種本としたユダヤ陰謀論が盛んに説かれていたという負の歴史もあります。現在、そのような戦前の書籍の復刻本が出版されたり、古くからあるユダヤ陰謀論の焼き直しがYouTube動画などで出回ったりしているので注意が必要です。

反ユダヤ主義が全世界にはびこるという終末預言

終末時代に反ユダヤ主義が世界に蔓延するという聖書の預言について、聖書学者のチャールズ・ファインバーグは次のように語っています。

ゼカリヤの預言の後半最後の部分は、遠い将来の出来事を扱っている。……この聖書預言は、この書の中でも、また旧約聖書のどの書と比較しても、重要性という点で並ぶものがない。イスラエルが終末時代に経験する出来事、つまり大患難時代と、地上に神の国が樹立されるという出来事を理解する上で、必要不可欠である。……私たちは、地上のすべての国が反ユダヤ主義というウイルスに冒される時代を通過することになる
― Charles L. Feinberg, God Remembers: A Study of Zechariah (Wheaton: Van Kampen, 1950), p.218, 222

“The last section of the latter part of Zechariah’s prophecy deals with events in the distant future… As a portion of the prophetic Scriptures it is second to none in importance in this book or any other Old Testament book. It is indispensable to an understanding of the events of the last days for Israel — the time of the Great Tribulation and the establishment of God’s kingdom on earth… ln the time of our passage all the nations of earth will be bitten by the virus of anti-Semitism.”

旧約時代の預言者ゼカリヤは、終末時代のイスラエルについて預言しています。その中で、地上のすべての国がイスラエルに敵対するようになると語っています。この時代をファインバーグは「地上のすべての国が反ユダヤ主義というウイルスに冒される時代」と呼んでいます。

ゼカリヤの預言

終わりの時代に全世界の国がイスラエルに敵対するというファインバーグの言う預言は、ゼカリヤ12:2~3に記されています。

2  「見よ。わたしはエルサレムを、その周りのあらゆる民をよろめかせる杯とする。エルサレムが包囲されるとき、ユダについてもそうなる。 3  その日、わたしはエルサレムを、どの民にとっても重い石とする。すべてそれを担ぐ者は、身にひどい傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まって来る。 

ここでは、地上のすべての国がイスラエルを攻め、エルサレムを包囲することが預言されています。イスラエルはアラブ諸国から何度も攻められたことがありますが、全世界の国から攻められたことはありません。そのため、これは将来の預言であることがわかります。

この預言で、エルサレムは攻めてくる国々に対して「よろめかせる杯」となると言われています。「杯」とはさばきの象徴で(黙示録16:19参照)、すべての国が神のさばきを受けてよろめく様子が描写されています。また、エルサレムは「重い石」となり、「それをかつぐ者は、ひどく傷を受ける」と言われています。ここから、イスラエルを攻める国々が大損害を被ることがわかります。この箇所に続くゼカリヤ12:4~9でも、イスラエルが敵に大打撃を与える場面が描写されています。

また、その後のゼカリヤ14:1~2でも、イスラエルがすべての国から攻められることが次のように預言されています。

1  見よ、【主】の日が来る。あなたから奪われた戦利品が、あなたのただ中で分配される。 2  「わたしはすべての国々を集めて、エルサレムを攻めさせる。都は取られ、家々は略奪され、女たちは犯される。都の半分は捕囚となって出て行く。しかし、残りの民は都から絶ち滅ぼされない。」 

1節では、「【主】の日が来る」と言われています。【主】の日とは、大患難時代を指す用語です。大患難時代とは、キリストが再臨する直前の7年間のことで、地上にあらゆる災厄が降りかかる苦難の時代です。この言葉から、ゼカリヤの預言は大患難時代に成就することがわかります。ゼカリヤ14:1~2でわかるのは、イスラエルは敵に大損害を与えつつも、最終的にはエルサレムが陥落するということです。

イスラエルを攻めるのは「すべての国々」ですから、この時には反ユダヤ感情が全世界に広がっていると考えられます。この戦争は、一般に「ハルマゲドンの戦い」と呼ばれる最終戦争で、大患難時代の最後に起こるものです。

MEMO
ハルマゲドンの戦いは、世界が反ユダヤ主義に陥る結果として起こるものです。イスラエルが行った悪のゆえに国際社会の制裁を受けるのではありません。そのことがわかるのは、ハルマゲドンの戦いに各国の軍隊を招集するのはサタンから出た悪霊と言われているためです(黙示録16:12~16)。サタンと反ユダヤ主義の関係については後ほど説明します。

繰り返しになりますが、ハルマゲドンの戦いの預言が成就するタイミングは大患難時代の最後です。ただ、このような状況が一朝一夕に出現するとは考えられません。そのため、終末時代が深まるにつれ、世界が次第に反ユダヤ主義に向かっていくことが予想されます。裏返すと、反ユダヤ主義が全世界に広まっていくことは、終末時代が深まっているという「時のしるし」でもあります。

なぜ反ユダヤ主義がはびこるのか

反ユダヤ主義は、ユダヤ人に対する言われなき憎悪や差別です。反ユダヤ主義は理不尽なものですが、聖書は反ユダヤ主義の背景に霊的(スピリチュアル)な理由があることが記されています。つまり、目に見える世界で起こっている反ユダヤ主義は、目に見えない世界で起こっている霊的な戦いが背景にあるということです。

背後にいる存在:サタン

サタン(悪魔)や悪霊というと、おとぎ話のように思う方がおられるかもしれません。しかし、聖書はサタンや悪霊を実在のものとして語っています。エペソ6:12では次のように言われています。

12  私たちの格闘は血肉に対するものではなく、支配、力、この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊に対するものです。 

クリスチャンの戦いは、人間との戦いではなく、霊的な存在との戦いであることを教えている聖書箇所です。この戦いが行われている主戦場は、人間の思い、思考です。そのため、パウロが「私たちはサタンの策略を知らないわけではありません」(2コリント2:11)と言うように、まずは聖書を通してサタンの戦略を知る必要があります。

黙示録12章

サタンの戦略を知る上で重要なのが、黙示録12章です。この章で、反ユダヤ主義の背景にはサタンの働きがあることが明らかにされています。

象徴の意味

黙示録12章では、数多くの象徴が使われています。この象徴を理解できないと、この章が語っていることも理解できません。そのため、この章で使われている象徴の意味をまず説明しましょう。黙示録12章冒頭の1節、3節、5節では、次のような象徴が使われています。

1  また、大きなしるしが天に現れた。一人の女が太陽をまとい、月を足の下にし、頭に十二の星の冠をかぶっていた。…… 3  また、別のしるしが天に現れた。見よ、炎のように赤い大きな竜。…… 5 女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖をもってすべての国々の民を牧することになっていた。……

ここではいくつかの象徴が使われています。その中でも重要なのが(1)女、(2)竜、(3)男の子(子)という象徴です。

黙示録で使われている象徴の多くは、黙示録の中で意味が説明されています。しかし、そうでない場合は、旧約聖書を調べると象徴の意味がわかるようになっています。黙示録はわかりにくいとよく言われますが、旧約聖書で使われている象徴の意味がわからないことが原因になっていることが多いように思います。逆に、象徴の意味がわかると、黙示録の内容が格段に理解しやすくなります。

上記に挙げた3つの象徴の意味を説明すると、以下のようになります。

(1)「女」はイスラエルの象徴です。

1節で女は「太陽をまとい、月を足の下にし、頭に十二の星の冠をかぶっていた」と言われています。ここで使われている象徴は、以下の創世記37:9~10に由来しています。

9  ……ヨセフは別の夢を見て、それを兄たちに話した。彼は、「また夢を見ました。見ると、太陽と月と十一の星が私を伏し拝んでいました」と言った。 
10  ヨセフが父や兄たちに話すと、父は彼を叱って言った。「いったい何なのだ、おまえの見た夢は。私や、おまえの母さん、兄さんたちが、おまえのところに進み出て、地に伏しておまえを拝むというのか。」 

ヨセフが夢の中で「太陽と月と十一の星が私を伏し拝んでいました」と言ったのに対して、父親のヤコブは「私や、おまえの母さん、兄さんたちが……地に伏しておまえを拝むというのか」と叱っています。ヤコブは、「太陽=父(ヤコブ)」「月=母」「十一の星=ヨセフの兄弟たち」と解釈していることがわかります。ヤコブには後にイスラエル十二部族となる12人の息子がいますが、ここではヨセフ以外の兄弟を指しているので「十一の星」となっています。まとめると、黙示録12:1の「太陽」「月」「十二の星」という象徴から、「女」はイスラエルを指していることがわかります。

(2)「竜」はサタンの象徴です。

この象徴の意味は、もう少し後の黙示録12:9で次のように説明されています。

その大きな竜、すなわち、古い蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれる者、全世界を惑わす者が地に投げ落とされた。……

この箇所から、「竜」はサタン(悪魔)を意味していることがわかります。

(3)「男の子(子)」はメシア(キリスト)の象徴です。

この子は「鉄の杖をもってすべての国々の民を牧することになっていた」(5節)と言われています。これは詩篇2:9の「あなたは 鉄の杖で彼らを牧し 陶器師が器を砕くように粉々にする」というメシア預言を引用したものです。同様の言葉が黙示録2:27と19:15でも使われており、どちらもキリストを指しています。

主な象徴の意味が明らかになったところで、黙示録12章の内容を見ていくことにしましょう。

サタンの戦略(過去):メシアの登場を妨げる

黙示録12章の前半の1~5節では、サタンが過去に採用していた戦略について説明しています。この戦略は、人類の救い主となるメシアの登場を妨げるというものです。ただ、この戦略はキリストの初臨によってすでに失敗しており、過去のものとなっています。黙示録12:1~5を解説する前に、この箇所の背景となっている「メシア預言」について説明しておく必要があります。

背景:メシア預言

旧約聖書に記されている「メシア預言」では、サタンを滅ぼし、人類を救うメシア(救い主)が登場することが預言されていました。最初のメシア預言である創世記3:15では、蛇(サタン)が神から次のような宣告を受けています。

15  わたしは敵意を、おまえと女の間に、おまえの子孫と女の子孫の間に置く。彼はおまえの頭を打ち、おまえは彼のかかとを打つ。

「女の子孫」はメシアを指します。このメシアは「おまえ(蛇)の頭を打ち」と言われています。つまり、メシアはサタンに致命傷を与えることが預言されています。そのため、メシアの登場を妨げることがサタンの重要な戦略となったのです。

また、このメシアはイスラエル民族から現れることも預言されていました(創世記22:18「あなた(アブラハム)の子孫(単数=メシア)によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる」)。そのため、イスラエルを絶滅させる試みが何度もあったことが聖書に記されています(出エジプト記のファラオによる迫害や、エステル記のハマンによる陰謀など)。

MEMO
旧約聖書のメシア預言を解説した書籍に、アーノルド・フルクテンバウム著『メシア的キリスト論』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ、2016年)があります。
黙示録12:1~5の解説

黙示録12:1~5に書かれていることの背景がわかりましたので、聖句の解説に入ります。

 1 また、大きなしるしが天に現れた。一人の女が太陽をまとい、月を足の下にし、頭に十二の星の冠をかぶっていた。 2  女は身ごもっていて、子を産む痛みと苦しみのために、叫び声をあげていた。 3  また、別のしるしが天に現れた。見よ、炎のように赤い大きな竜。…… 4  その尾は天の星の三分の一を引き寄せて、それらを地に投げ落とした。また竜は、子を産もうとしている女の前に立ち、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた。 5  女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖をもってすべての国々の民を牧することになっていた。その子は神のみもとに、その御座に引き上げられた。

2節では、イスラエル(女)がメシア(子)を世に送り出す前に痛み、苦しむ様子が描写されています。4節の「天の星の三分の一」の「星」とは、天使のことです。これはサタンが地上に送る天使ですので、堕天使、つまり悪霊を指します。サタンは悪霊を送り、誕生するメシアを滅ぼそうとするということです。「竜は、子を産もうとしている女の前に立ち、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた」とあるとおりです。

以上が天での出来事ですが、それに対応する地上での出来事がマタイ2章の出来事です。当時、イスラエルを治めていたヘロデは、東方の博士からメシアが生まれるという知らせを受けて、メシアが生まれると預言されていたベツレヘムの地で幼児を虐殺しています。メシアの登場を妨げるためです。しかし、黙示録12:5に「女は男の子を産んだ」とあるように、イエスはベツレヘムで生まれた後にエジプトに逃れており、サタンの陰謀は失敗に終わります。また、「その子は神のみもとに、その御座に引き上げられた」とあるように、キリストは地上で十字架の贖いのわざを完成させた後、昇天します(使徒1:9)。

以上が、サタンが過去に採用していた戦略で、人類の救い主となるメシアの初臨を妨げるというものでした。この救い主がイスラエルを通して生まれることが約束されていたので、イスラエル(ユダヤ人)はサタンの標的となったのです。ただ、初臨は聖書どおりに実現したので、この戦略は失敗に終わります。この次にサタンが採用するのが、メシアの再臨を妨げるという戦略です。

サタンの戦略(現在と将来):メシアの再臨を妨げる

メシアの初臨を妨げることに失敗したサタンは、メシアの再臨を妨げるという次の戦略に移行します。これが黙示録12:6以降のテーマとなります。ただ、黙示録12:6以降を解説する前に、この箇所の背景となっている「メシア再臨の預言」について説明しておく必要があります。

背景:メシア再臨の預言

イエスは、ご自分の再臨に関してマタイ23:39で次のように語っておられます。

39  わたしはおまえたちに言う。今から後、『祝福あれ、主の御名によって来られる方に』とおまえたちが言う時が来るまで、決しておまえたちがわたしを見ることはない。」 

「おまえたち」と言われているのは「エルサレム」(マタイ23:37)のことです。ここでイエスはエルサレムをユダヤ人全体の象徴として語っています。また、「祝福あれ、主の御名によって来られる方に」とは、メシアを迎える時のかけ声です(詩篇118:26、マタイ21:9参照)。そのため、この箇所は、ユダヤ人がイエスをメシアとして受け入れる時まで、再臨はないという意味になります。これを裏返すと、ユダヤ人がイエスをメシアとして受け入れたら、イエスは再臨するということになります。ただ、イエスをメシアとして受け入れるユダヤ人がいなくなれば、再臨は実現しないということもわかります。

黙示録12:6以降の解説

以上の背景を踏まえた上で、黙示録12章の解説に戻ります。6節になると時代が変わり、将来の預言が始まっています。黙示録12:6では次のように言われています。

6  女は荒野に逃れた。そこには、千二百六十日の間、人々が彼女を養うようにと、神によって備えられた場所があった。 

イスラエルの荒野への逃避行は大患難時代(7年間)の中間期に起こることで、「千二百六十日」とは大患難時代の後半3年半のことです。「神によって備えられた場所」とは、エレミヤ49:13~14、ミカ2:12によると「ボツラ」のことで、現在のヨルダンにあるペトラという場所です。

ペトラ
ペトラ(写真:Nina Pearson)

MEMO
ヘブル語の「ボツラ」という単語には「囲い」という意味があります。そのため、新改訳聖書など一般の日本語訳聖書は、ミカ2:12の「ボツラ」を「囲い」と訳しています(「囲いの中の羊のように…」)。しかし、文語訳では一般名詞ではなく固有名詞として「ボヅラの羊のごとく」と訳されています。ここは固有名詞として訳すべきところです。

続く黙示録12:7~12では、天で神の御使いとサタンの軍勢の間で戦いが起こり、サタンが地上に投げ落とされるという出来事が描かれます。そして、黙示録12:13~14では次のように続きます。

13  竜は、自分が地へ投げ落とされたのを知ると、男の子を産んだ女を追いかけた。 14  しかし、女には大きな鷲の翼が二つ与えられた。荒野にある自分の場所に飛んで行って、そこで一時と二時と半時の間、蛇の前から逃れて養われるためであった。 

天から地上に落とされたサタンは、メシアを生んだイスラエルを迫害します。しかし、イスラエルは「鷲の翼」が与えられてサタンの迫害を逃れます。「鷲の翼」とは、神の助けを意味します(出エジプト19:4、申命記32:10~11参照)。「荒野にある自分の場所」は先述の通りペトラで、「一時と二時と半時の間」とは先ほど説明したように大患難時代の後半3年半のことです。ユダヤ人は、このペトラに逃れて3年半、主に「養われ」ます。しかし、サタンはこのペトラにも攻撃を仕掛けます。黙示録12:15~16では次のように続きます。

15  すると蛇はその口から、女のうしろへ水を川のように吐き出し、彼女を大水で押し流そうとした。 16  しかし、地は女を助け、その口を開けて、竜が口から吐き出した川を飲み干した。 

15節では「水を川のように吐き出し、彼女を大水で押し流そうとした」と言われています。これは洪水のイメージですが、聖書では洪水は軍事攻撃の象徴として使われます(ダニエル11:22、40参照)。サタンの軍隊はペトラに逃げ込んだユダヤ人の後を追い、ユダヤ人を滅ぼそうとします。しかし、「地は女を助け、その口を開けて、竜が口から吐き出した川を飲み干した」とあるように、サタンの企みは失敗に終わります。

サタンがユダヤ人を滅ぼそうとする理由

まとめると、黙示録12章は、サタンがユダヤ人(イスラエル)を滅ぼそうとする理由が2つあることを語っています。

  • 過去:キリストの登場を妨げるため
  • 現在と将来:キリストの再臨を妨げるため

以上のように、聖書では、反ユダヤ主義の背後にはサタンの働きがあること、終末時代の末期に反ユダヤ主義が全世界に広がることが教えられています。

反ユダヤ主義の結果

反ユダヤ主義には結果が伴います。創世記12:1~3では、神がアブラハム(アブラム)に次のように約束しておられるからです。

1  【主】はアブラムに言われた。「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。 2  そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。 3  わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される。

この神の約束は「アブラハム契約」と呼ばれ、イサク、ヤコブが継承し(創世記26:2~5、24、27:29、28:3~4など)、イスラエル(ユダヤ)民族が受け継いでいます。ここで神は「あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう」と宣言しています。つまり、ユダヤ人を呪う者は神に呪われるという約束です。実際に、ハルマゲドンの戦いでユダヤ人を滅ぼそうとした反キリストの軍隊は、キリストによって滅ぼされることが預言されています(ヨエル3章、ゼカリヤ14:3~15、黙示録19:11~21参照)。

MEMO
アブラハム契約の祝福と呪いの約束が歴史上でどのように成就してきたかについては、アーノルド・フルクテンバウム著『ヘブル的キリスト教入門』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ、2016年)の第5章「メシアニック・ジューとユダヤ人社会」をご参照ください。

まとめ

聖書では、終末時代に反ユダヤ主義が全世界に広がること、反ユダヤ主義の背後にはサタンがいることが教えられています。イスラエルやユダヤ人も聖書のいう罪人の集団ですので、非難すべき点はあるでしょう。しかし、ほかの国や人が同じことをしても非難されず、イスラエルやユダヤ人がすると非難されるということであれば、反ユダヤ主義と考えることができます。サタンは「この世の神」(2コリント4:4)と呼ばれ、この世界の人々を導いていますので(エペソ2:1~3)、自分自身も影響を受けてないか吟味する必要があります。

ユダヤ人をめぐっては上記のような霊的力学が働きますので、ユダヤ人やイスラエルを非難する報道や告発を見聞きしても慎重に判断する必要があります。過去にも、1894年にフランスで起きたドレフュス事件や、ユダヤ人が拉致した子どもの血を儀式のために用いたとする「血の中傷」など、ユダヤ人が非難されるが、結局は冤罪だったという事例が数多くあるためです。現在も、イスラエルにテロ攻撃を行うハマスはイスラエルがつくったものだという荒唐無稽な陰謀論がまかり通っています。

また、アブラハム契約の約束がユダヤ人に与えられているというと、なぜユダヤ人だけなのだと反感を覚える人がいます。しかし、ユダヤ人が選ばれたのは目的としての選びではなく、手段としての選びです。神は、人類を祝福するための器(手段)としてユダヤ人を選ばれたということです。創世記12:3で「地のすべての部族は、あなたによって祝福される」と言われているとおりです。そのため、神はユダヤ人を通してみことばを与え(ローマ3:1~2)、さまざまな神の契約や約束を与えられました(ローマ9:4~5)。

詩篇83:3~4、16~18では、イスラエルを滅ぼそうとする者について次のように言われています。

3  彼らは あなたの民に対して悪賢いはかりごとをめぐらしあなたにかくまわれている者たちに悪を企んでいます。 4  彼らは言っています。「さあ 彼らの国を消し去ってイスラエルの名がもはや覚えられないようにしよう。」 …… 16  彼らの顔を恥で満たしてください。【主】よ 彼らが御名を捜し回りますように。 17  彼らが いつまでも恥を見て 恐れおののきますように。辱めを受けて 滅びますように。 18  こうして彼らが知りますように。その名が【主】であるあなただけが全地の上におられる いと高き方であることを。 

このみことばにあるように、イスラエルを滅ぼそうとする人々は辱めを受けます。それは、人々が「御名を捜し回り」「その名が【主】であるあなただけが全地の上におられるいと高き方であることを」知るようになるためです。

筆者の義父は「イスラエルには神がついている」と言います。義父は未信者ですが、イスラエルが圧倒的に不利な戦争を何度も戦い、そのたびに勝利したことを見聞きしてきたからです。イスラエルは、神が栄光を表し、人々がいと高き神を知るようになるための器でもあるのです。

反ユダヤ主義は、神に対する反抗です。サタンの計画に加担することだからです。神の選びの器であるイスラエルを滅ぼそうとすることは、神に敵対することです。

反ユダヤ主義は時代が進むにつれて広まっていくことが予想されます。しかし、イスラエルが絶ち滅ぼされることはありません。「見よ イスラエルを守る方はまどろむこともなく 眠ることもない」(詩篇121:4)と言われているためです。

参考資料

  1. “The Covenant of the Islamic Resistance Movement (https://avalon.law.yale.edu/20th_century/hamas.asp)

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