今はどういう時代か ― 時のしるしを見分ける

世界情勢と預言

歴史には転換期があります。転換期は、後になって振り替えるとそうだとわかるのですが、その時に生きている人はそのように認識していないことがよくあります。しかし、今は歴史の転換期であるという認識を持っている人と、そうでない人では生き方が違ってきます。

イエスが地上生涯を歩まれた紀元1世紀のイスラエルで生きていたユダヤ人も、そのような歴史の転換期にいた人々でした。しかし、メシア(救い主)であるイエスが世に来ているのに、ユダヤ人指導者はそれに気付きませんでした。イエスがメシアであるという十分なしるしが与えられているのに、それを信じなかったのです。新約聖書のマタイ16:1~4では、次のように言われています。

1 パリサイ人たちやサドカイ人たちが、イエスを試そうと近づいて来て、天からのしるしを見せてほしいと求めた。 2 イエスは彼らに答えられた。『夕方になると、あなたがたは「夕焼けだから晴れる」と言い、 3 朝には「朝焼けでどんよりしているから、今日は荒れ模様だ」と言います。空模様を見分けることを知っていながら、時のしるしを見分けることはできないのですか。

この記事では、ここで言われているような「時のしるし」を見分けることをテーマとして、今という時代を眺めてみたいと思います。

時のしるしを見分ける

イエス時代のユダヤ人には、メシア(救い主)がどのように世に現れるかを預言した「メシア預言」が与えられていました。たとえば、メシアはダビデの子孫として(イザヤ11:1~2、1歴代誌17:10~14)、ユダヤ地方のベツレヘムで生まれる(ミカ5:2)といった預言です。しかし、ユダヤ人指導者は、メシア預言に従って時のしるしを見分けようとしませんでした。その結果、紀元70年にエルサレムはローマ軍に滅ぼされ、エルサレム神殿はイエスが「一つの石も、ほかの石の上に積まれたまま残してはおかない」と預言したとおりに破壊し尽くされました(ルカ19:43~44)。そして、多くのユダヤ人が世界に離散するという悲劇がもたらされました。

それと同様に、現代にも、終わりの時代に起こることを預言した「終末預言」が与えられています。この終末預言を読み解くことで、「時のしるし」を見分け、今がどういう時代かを知ることができます。

終末時代のしるし

イエスは、世が終わる時が迫っている終末時代のしるしについて、マタイ24:3~14で次のように語っています。

3  イエスがオリーブ山で座っておられると、弟子たちがひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのですか。あなたが来られ、世が終わる時のしるしは、どのようなものですか。」 
4  そこでイエスは彼らに答えられた。「人に惑わされないように気をつけなさい。 5  わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『私こそキリストだ』と言って、多くの人を惑わします。 6  また、戦争や戦争のうわさを聞くことになりますが、気をつけて、うろたえないようにしなさい。そういうことは必ず起こりますが、まだ終わりではありません。 7  民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、あちこちで飢饉と地震が起こります。しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりなのです。 9  そのとき、人々はあなたがたを苦しみにあわせ、殺します。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。 10  そのとき多くの人がつまずき、互いに裏切り、憎み合います。 11  また、偽預言者が大勢現れて、多くの人を惑わします。 12  不法がはびこるので、多くの人の愛が冷えます。 13  しかし、最後まで耐え忍ぶ人は救われます。 14  御国のこの福音は全世界に宣べ伝えられて、すべての民族に証しされ、それから終わりが来ます。 

この預言に従って今という時代を見れば、すでに終末時代に入っていることは明らかです。この点をイエスのことばに沿って見ていきたいと思います。

「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり」

マタイ24章の6節では、戦争や戦争のうわさがあっても、終末時代が来たと思ってはならないと言われています。その前提に立って、イエスは7節で「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がる」時が「産みの苦しみの始まり」であると語っています。つまり、それが終末時代に入ったことのしるしであるとイエスは語っています。

MEMO
ここでいう「産みの苦しみ(birth pangs)」とは、陣痛を意味しています。旧約聖書では、メシア(救世主)が地上を統治するメシア的王国(「千年王国」とも呼ばれる)の到来が預言されていました。このメシア的王国が生まれようとするために起こる陣痛の最初が「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がる」という出来事です。

この「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がる」という表現は、当時のユダヤ教ラビの用語で、世界大戦を意味します。たとえば、「ベレシート・ラッバ」と呼ばれるユダヤ文献には、次のように記されています。1

王国が王国に敵対し、次々に立ち上がるのを見たら、メシアの足跡に耳を澄ませなさい。

If you shall see the kingdoms rising against each other in turn, then give heed and note the footsteps of the Messiah (XLII:4).

また、ユダヤ神秘主義の注解書『Zohar Chadash』でも、同様の言葉が世界大戦を意味する慣用句として使われています。2

その時、世界には戦争が起こる。国は国に、町は町に敵対し、イスラエルの敵には多くの苦難が降りかかるであろう。

At that time wars shall be stirred up in the world. Nation shall be against nation and city against city; much distress shall be renewed against the enemies of the Israelites.

20世紀には、第一次世界大戦(1914~1918年)、第二次世界大戦(1939年~1945年)と、二度の世界大戦が起こりました。そのため、この世界大戦の預言はすでに成就しています。世界大戦の預言が成就したということは、今はすでに「産みの苦しみ」の時代、つまり終末時代に入っているということになります。そして、終末時代のしるしは、妊婦が経験する陣痛と同じように、波のように何度も押し寄せてきます。そのようなもう一つのしるしが「飢饉と地震」です。

「あちこちで飢饉と地震が起こります」

第一次世界大戦の後、20世紀には世界各地で大飢饉が起こっています。数十万人以上の死者が発生した大飢饉を挙げただけでも、次のような長いリストになります。3

  • 1914年~1918年:第一次世界大戦中、レバノン山脈の飢饉により、人口の3分の1が死亡。
  • 1917年~1921年 – ロシア革命の頃、トルキスタンでの飢饉が続き、人口の6分の1が死亡。
  • 1921年:ロシアの飢饉で500万人が死亡。
  • 1928年~1929年:中国北部の飢饉で300万人が死亡。
  • 1932年~1933年:ウクライナの飢饉で260万人~1000万人が死亡。
  • 1932年~1933年:カザフスタンの飢饉で120万人~150万人が死亡。
  • 1936年:中国で飢饉。推定死者数は500万人。
  • 1941年~1944年:ギリシャでイタリア・ブルガリア・ドイツ軍の占領により飢饉。推定死者数は30万人。
  • 1942年~1943年:中国で飢饉。100万人が死亡。
  • 1943年:インドのベンガル飢饉。150万人~350万人が死亡。
  • 1946年~1947年:ソビエト飢饉。100万人~150万人が死亡。
  • 1959~1961年:中国の大躍進政策による大飢饉で1500~5500万人が死亡。
    …(その後も、カンボジア、北朝鮮などで大飢饉が発生している)

また、20世紀には大地震も急増しています。以下は、1900年~2019年に世界で起きたマグネチュード6以上の地震の回数を10年単位でグラフにしたものです。

1900年~2019年に世界で起きたマグネチュード6以上の地震

出典:USGS(米国地質調査所)

多少の上がり下がりはあるものの、傾向としては確実に、しかも大幅に増加していることが見て取れます。具体的に回数を比較すると、1900年~1909年には68回だったものが、第一次世界大戦のあった1910年~1919年には160回と2倍以上に跳ね上がっています。地震の回数はさらに増え続け、1900年~1909年と2010年~2019年(1495回)を比較すると、実に20倍以上の増加となっています。

もちろん、計測技術が向上し、計測地点が整備されたことで、もれなく地震をカウントできるようになったという要因もあるとは思います。しかし、20倍以上の増加を技術の向上や計測体制の強化で説明し切ることは難しいと思います。

「偽預言者が大勢現れて」

マタイ24:11で「偽預言者が大勢現れて、多くの人を惑わします」と言われているように、新使徒運動(NAR)により、多くの「預言者」と呼ばれる人々が世に出てきています。4

しかし、現在はそれだけでなく、「預言者学校」と呼ばれる預言者の育成学校がいくつも設立され、数多くの「預言者」が世に放たれています。

そのような預言者学校の一つが、米国カリフォルニア州レディングにあるベテル教会の「ベテル預言者学校(Bethel School of Prophets)」です。

Bethel School of Prophets

ベテル教会で預言入門講座を教えているルネー・エバンスは、クリスチャンはみな預言者になれると教え、次のように語っています。5

私が日常的預言者(everyday prophet)という時、誰のことを指していると思いますか。それは皆さん、皆さんです。私や皆さんが日常的預言者なのです。

When I speak we are going to be talking about the everyday prophet the everyday prophet guess who the everyday prophet is y’all all y’all. You and I are the everyday prophet.

また、エバンスは、「失敗のない預言テクニック(fail-proof prophetic techniques)」として、次のようにも教えています。6

聖霊に、誰かに贈る言葉を与えてほしいと求めてください。一言でも結構です。一文や聖句1か所でもいいのです。あなたに見えている光景でもいいのです。だから、聖霊に言葉を求めてください。もし聞こえなければ、話を作ってしまってもいいのです。私が冗談を言っていると思っているでしょうが、本気です。

I want you to ask Holy Spirit to give you a word to someone. It could be a single word. A sentence or scripture. A picture that you’re seeing. So ask him for a word. If you are not hearing one, make it up. You think I’m joking but I’m not.

このような教えを受けた「預言者」が何百人、何千人といると思うと空恐ろしいことですが、それが今という時代です。

MEMO
ベテル預言者学校についてのより詳しい情報は、本サイト記事「ビル・ジョンソンとベテル教会(3)預言者の学校?」を参照してください。

また、預言者学校は、ベテル教会だけでなく、それ以外の新使徒運動(NAR)系の団体も運営しています。NAR指導者のリック・ジョイナーが設立したモーニングスター大学預言者学校(Morningstar University School of Prophets)もその一つです。リック・ジョイナーは、みずからが語る「預言」は神からのものであるとする一方で、パウロの言葉は「信仰の土台ではない」と教えている指導者です。つまり、事実上、新約聖書のパウロ書簡よりも自分の「預言」の方が権威があると教えている人物です。

このジョイナーの預言者学校の紹介動画では、次のように言われています。7

私たちは今、神の声を聞く本物の能力を必要としている時代に生きています。神はこの時代に、神の声を聞くための能力を持つ特別な集団を育てています。教会の中だけでなく、政治家や社会的リーダーにも影響を与え、神が語っていることを伝え、神の心に結びつけること。これが預言の目的です。

We are living in a time where we need authentic ability to hear from god. God is raising up special forces in this hour to have a grid for hearing the voice of God and not just in church but influencing political leaders social leaders telling them what God is saying and connecting them to the heart of god which is the purpose of prophecy.

ジョイナーのような「預言者」が「教会の中だけでなく、政治家や社会的リーダーにも影響を与え」ることで、どのような混乱が起きるかは想像に難くありません。しかも、そのような教師が教える学校で教育を受けた「預言者」が再生産されていくことで、混乱がさらに広がっていくことは容易に予想がつきます。

まとめ

マタイ24:3~14によると、現在はすでに終末時代に入っています。つまり、聖書的には、今の世が終わり、メシア的王国(千年王国)と呼ばれる次の世界が到来する直前の時代に入っているということになります。

参考文献

  • Arnold G. Fruchtenbaum, The Footsteps of the Messiah: Revised 2020 Edition (Ariel Ministries, 2020)
  • Arnold G. Fruchtenbaum, Yeshua: The Life of Nessiah from a Messianic Jewissh Perspective (Ariel Ministries, 2017)
  • 2014 年フルクテンバウム博士セミナー『携挙・大患難時代・そして
    ユダヤ人の運命
    』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ)
  • ウィリアム・ウッド『日本の教会に忍び寄る危険なムーブメント』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ、2018年)
  1. Arnold G. Fruchtenbaum, The Footsteps of the Messiah (Ariel Ministries, 2002), p.627

  2. 同書、 p.626

  3. Wikipedia「飢饉の一覧」(https://ja.wikipedia.org/wiki/飢饉の一覧#20世紀)

  4. ウィリアム・ウッド『日本の教会に忍び寄る危険なムーブメント』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ、2018年)「NARの問題点 その五『的中率の低い預言者たち』」

  5. Bethel Austin, “Everyday Prophet Part 1 – Renee Evans” (https://www.youtube.com/watch?v=U3zJbmMw4Bs)

  6. 同上

  7. Morningstar University, “School of Prophets” (https://www.youtube.com/watch?v=_nqg5WsyADc&t=40s)

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イスラエルの国内情勢の変化と第三神殿への道 - 聖書ニュース.com

[…] 聖書では、終わりの時代にエルサレムに神殿が建つことが預言されている(「終末預言を読み解く:第三神殿の再建」参照)。その預言の中では、「いけにえとささげ物」がささげられていることも記されている(ダニエル9:27)。そのため、モリスのような神殿活動家の主張は、今は突飛な主張と思われても、必ず実現する。過去から現在に至るまでの歴史の流れを見ても、時代は聖書が預言した通りに進んでいることがわかる。モリスが言うように、かつてはイスラエルの地にユダヤ人国家を建設することも、ユダヤ人がエルサレムの西壁で礼拝することも夢物語だった。そして今、神殿の建設を公式に支持する政党が政権与党の一部となっている。もはや第三神殿の建設も、夢物語とは言えなくなっている。 […]

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マタイ24:1~2 ― 神殿崩壊の預言 - クリスチャンコモンズ

[…] イエスの神殿崩壊の預言は、40年後に成就しました。イエスの預言はそれだけではありません。イエスは、終末時代と呼ばれるずっと後の時代のことも預言しています。その預言の内容を見ると、今私たちが生きている時代について語っているとわかります。この預言についても、聖書ニュース.com「今はどういう時代か ― 時のしるしを見分ける」で確認してみてください。 […]

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終末預言を読み解く:反ユダヤ主義の高まり - 聖書ニュース.com

[…] 繰り返しになりますが、ハルマゲドンの戦いの預言が成就するタイミングは大患難時代の最後です。ただ、このような状況が一朝一夕に出現するとは考えられません。そのため、終末時代が深まるにつれ、世界が次第に反ユダヤ主義に向かっていくことが予想されます。裏返すと、反ユダヤ主義が全世界に広まっていくことは、終末時代が深まっているという「時のしるし」でもあります。 […]

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