時のしるしを見分ける:世界統一宗教(1)教会一致運動

世界情勢と預言

聖書では、世の終わりには「世界統一宗教」が現れることを預言しています。世の中にはこれだけ多くの宗教があふれているのに、それが一つになるというのはおとぎ話のように聞こえます。ただ、近年の世界情勢を見ていると、この預言の成就に向けて、舞台が整いつつあるように思います。

MEMO
世界統一宗教の預言については、「終末預言を読み解く:世界統一宗教」をご覧ください。

教会一致運動

キリスト教会は、1054年にローマカトリック教会とギリシャ正教会に分裂し、1517年に始まる宗教改革でローマカトリック教会からプロテスタントが分離して以来、分裂した状況が続いてきました。世界統一宗教どころか、キリスト教の内部も統一できていなかったわけです。

しかし、近年になって、ローマカトリック教会を中心にエキュメニカル(教会一致)運動が大きく進展し、状況が変わりつつあります。そのことを示す象徴的な出来事が、ローマカトリック教会とプロテスタント教会の元祖とも言えるルーテル教会の歴史的な和解です。

ローマカトリック教会とルーテル教会の和解

ローマカトリック教会とルーテル世界連盟は、1999年10月31日に「義認の教理に関する共同宣言(JOINT DECLARATION ON THE DOCTRINE OF JUSTIFICATION)」に調印しました。この宣言は、ルターがカトリック教会に異議を唱えた「義認」の教理について、カトリック教会とルーテル教会が基本的に一致したというものです。五百年もの間、両教会を隔てていた壁を取り去る歴史的な出来事と称賛されました。この宣言では次のように言われています。

信仰によって、私たちは共に、義認は三位一体の神のみわざであると確信している。御父は、罪人を救うために御子を世に遣わされた。義認の土台と前提は、キリストの受肉、死、そして復活である。つまり、義認とは、キリストご自身が私たちの義であることを意味し、御父のみこころに従い、聖霊によってあずかるものである。私たちは共に告白する。恵みのみによって、キリストの救いのみわざを信じることによって、そして私たちの側のいかなる功績のためでもなく、私たちは神に受け入れられ、聖霊を受ける。聖霊は、私たちの心を新たにすると同時に、良い行いをするように召し、そのための力を与えてくださる。
― “JOINT DECLARATION ON THE DOCTRINE OF JUSTIFICATION by the Lutheran World Federation and the Catholic Church,” Dicastery for Promoting Christian Unity

In faith we together hold the conviction that justification is the work of the triune God. The Father sent his Son into the world to save sinners. The foundation and presupposition of justification is the incarnation, death, and resurrection of Christ. Justification thus means that Christ himself is our righteousness, in which we share through the Holy Spirit in accord with the will of the Father. Together we confess: By grace alone, in faith in Christ’s saving work and not because of any merit on our part, we are accepted by God and receive the Holy Spirit, who renews our hearts while equipping and calling us to good works.

これを読むと、「行いによる救い」や「煉獄」を教えるローマカトリック教会のイメージとは異なり、プロテスタントの義認の教えと基本的に変わらない内容になっていることに驚きます。ルーテル派が共同宣言に調印したこともうなずけます。この宣言で、ルーテル教会はルターが提起した問題は解決済みと考え、もはや対立を続ける必要はないと判断したのでしょう。

MEMO
ただ、ローマカトリック教会がルターの主張した信仰義認を本当に受け入れたかというと、そうではありません。この点は、次の記事で明らかにします。

ローマカトリック教会とプロテスタント諸教派の和解

この共同宣言はプロテスタント諸派にも波及し、2006年7月にはメソジスト教会が同宣言を受け入れ、2016年には英国国教会、2017年には改革派教会が宣言を受け入れています。この宣言は、カトリック教会とプロテスタント諸教会の教会一致運動が前進する大きな流れを作りました。

こうした流れの中で、さらに教会一致運動を推進することになるのが、2013年に就任したフランシスコ法王です。

フランシスコ法王の登場

フランシスコ法王が特に力を注いできたことの一つは、教会一致運動です。法王は、就任直後から、事あるごとにキリスト教会の一致を訴えてきました。

最近では、新型コロナウィルスのパンデミックに言及し、キリスト者は「一つの家族」であるとして次のように語っています。

パンデミックが世界のキリスト教会にもたらした最初の重要な結果は、私たちは全員が一つのキリストの家族に属していることを改めて認識したことです。パンデミックによって、私たちは本当はお互いがどれほど親密な関係にあり、お互いに対してどれほど責任を負っているのかを理解することができました。
― Lisa Zengarini, “Pope: Christian Churches must unite against barbarism of war,” Vatican News, 6 May 2022

A first significant ecumenical result of the pandemic was a renewed awareness of us all belonging to the one Christian family. It made us understand how close we really are to each other and how responsible we are for each other…

また、2022年にロシアがウクライナに侵攻した時も、クリスチャンの一致を求めて次のように語っています。

野蛮な戦争を前にして、一致を求める心をもう一度育てる必要があります。習慣や諦めから、キリスト者の間にある分裂を見て見ぬふりをすることは、私たちの心の汚染を許すことになり、紛争を生む肥沃な土壌となります。
― Lisa Zengarini, “Pope: Christian Churches must unite against barbarism of war,” Vatican News, 6 May 2022

“In the face of the barbarism of war, this yearning for unity must be nurtured again.”
“Ignoring the divisions among Christians, out of habit or resignation, means tolerating the pollution of our hearts that makes the ground fertile for conflict,”

フランシスコ法王は就任以来、一貫して教会一致運動をリードしてきました。その精力的な活動の対象は、プロテスタント以外の教会にも広がっています。

ローマカトリック教会と正教会との和解

フランシスコ法王は、2016年にロシア正教のクリル総主教とキューバのハバナで会談し、両教会の一致を求める共同宣言に署名しています。米CBSニュースは次のように報道しています。

 ローマ法王フランシスコとロシア正教会のキリル総主教は、2016年2月12日にハバナで歴史的な会談を行った後、宗教的一致に関する共同宣言に署名した。…
同日、ローマ法王フランシスコはロシア正教会総主教との史上初のトップ会談の前にキューバに降り立った。キリスト教の千年にわたる分裂の歴史上で画期的な日となった。
Pope signs unity declaration with Russian Orthodox Patriarch in Cuba,” CBS News, 12 Feb 2016

Pope Francis and Russian Orthodox Patriarch Kirill have signed a joint declaration on religious unity after their historic meeting in Havana Friday…
Pope Francis landed in Cuba earlier in the day for the first-ever papal meeting with the head of the Russian Orthodox Church, a historic development in the 1,000-year schism within Christianity.

ただ、ロシア正教との共同宣言には、ルーテル教会との共同宣言とは違い、次のような文言が含まれています。

私たちは、キリスト教の最初の千年という同じ霊的伝統を共有しています。この伝統の証人は、神の至聖なる母、聖母マリアと、私たちが崇敬する聖人たちです。
― “Full text of joint declaration signed by Pope Francis and Patriarch Kirill,” Catholic News Agency, 12 Feb 2016

We share the same spiritual Tradition of the first millennium of Christianity. The witnesses of this Tradition are the Most Holy Mother of God, the Virgin Mary, and the saints we venerate.

この宣言を読むと、カトリック教会は諸教会との一致を求める中で、相手に合わせて顔を使い分けていることがわかります。この文言をプロテスタント教会との共同宣言に入れていれば、署名には至らなかったでしょう(プロテスタントはマリア崇拝や聖人崇拝を偶像礼拝として否定している)。

また、フランシスコ法王はギリシャ正教会に対しても、ローマカトリック教会が犯した罪を悔い改め、一致を求めています。2021年12月に法王がギリシャ教会の大司教と行った会談について、カトリックの『National Catholic Reporter』紙は次のように報道しています。

 ローマ法王フランシスコは、12月4日のギリシャ正教のトップとの会談で、正教徒に対して犯した歴史的な「多くのカトリック教徒による過ち」に対する赦しを求め、カトリック教徒と正教徒がさらなる一致を追い求めるように呼びかけた。
3日間のギリシャ訪問の初日に、教皇は「恥ずかしながら、私はカトリック教会が、イエスと福音とはほとんど、あるいはまったく関係なく、利益と権力を求める思いから出た行動と決断によって、私たちの交わりを著しく弱めてしまったことを認めます」と述べている。
― Christopher White, “Pope Francis apologizes for Catholic wrongs against Orthodox believers, urges unity,” National Catholic Reporter, 4 Dec 2021

Pope Francis asked forgiveness for the historical “mistakes committed by many Catholics” against Orthodox Christians during a Dec. 4 meeting with the head of the Greek Church, as he urged Catholics and Orthodox believers to pursue greater unity.
“Shamefully, I acknowledge this for the Catholic Church, actions and decisions that had little or nothing to do with Jesus and the Gospel, but were instead marked by a thirst for advantage and power, gravely weakened our communion,” the pope said during the first day of his three-day visit to Greece.

この謝罪を受けたギリシャ正教会の大司教イエロニモス2世は、フランシスコ法王の言葉に対して次のように返しています。

あなたの判断力、霊的な偉大さ、長年教会を導いてきた経験に絶対的な信頼を置いています。
― Christopher White, “Pope Francis apologizes for Catholic wrongs against Orthodox believers, urges unity,” National Catholic Reporter, 4 Dec 2021

I have absolute trust in your power of judgment, your spiritual greatness and long ecclesiastical experience.

ルーテル教会と正教会という長年のライバルと和解したローマカトリック教会は、福音派との教会一致運動にも積極的に動いています。

ローマカトリック教会と福音派教会との一致

ローマカトリック教会は、福音派との一致運動も進めています。特に、カトリック教会内でもカリスマ運動(聖霊のしるしを求める運動)が広がっているという背景もあって、カリスマ派教会との一致運動が進んでいます。その中でも、新使徒運動(NAR)と繁栄の神学に立つ教会とかなり親密な関係を築いています。

たとえば、フランシスコ法王は、繁栄の神学の代表的な指導者であるケネス・コープランド(Kenneth Copeland)の集会にビデオメッセージを送り、ローマカトリック教会との一致を次のように訴えています。

私たちにはそれぞれ異なる伝統があります。しかし、私たちは兄弟として互いに出会う必要があるのです。ヨセフのように共に泣かなければなりません。この涙、愛の涙が私たちを一つにするのです。私は兄弟として皆さんに語りかけています。
― “Pope Francis Sends Video Message to Kenneth Copeland – Lets Unite,” Prove All Things… (https://www.youtube.com/watch?v=uA4EPOfic5A)

We have diverse traditions. But we have to encounter one another as Brothers. We must cry together like Joseph did. These tears will unite us. The tears of love. I am speaking to you as a Brother.

このような語りかけを行ったのは、フランシスコ法王が初めてでしょう。このビデオメッセージで会場は大いに盛り上がり、ケネス・コープランドは次のように応答しています。

史上最大の教会分裂は、カトリック教会が分裂した時です。…この話はご存じでしょう。プロテスタント教会の始まりです。…愛ある人々の中で、私たちはプロテスタント(抗議する者)と呼ばれているのですよ。もう500年もの間、抗議しているのです。1999年10月31日に、ドイツのアウグスブルクにカトリック教会とルーテル教会の代表が集まり、義認というテーマで共同宣言に署名しました。500年にわたる論争、誤解、そして時には戦争がありましたが、和解と、キリストのからだに与えられた聖霊の賜物を認め合う道を歩み始めたのです。しかし、分裂の主な原因となった分離の霊が倒されたので、主イエスが解放され…このことが進んだのです。…アーメン。
― “Amir Tsarfati: The Rise of the One World Religion,” Behold Israel with Amir Tsarfati

The biggest church split in history was when the Catholic church split, … you know the story, the beginning of the protesting church…among the people of love, we’re called protesters? We’ve been protesting for 500 years, baby. October the 31st 1999, representatives of the Catholic and the Lutheran churches gathered in Augsburg, Germany and signed a joint declaration on the subject of justification. And so 500 years of arguments, misunderstandings, and sometimes war began to give way to reconciliation and recognition of the gifts of the Holy Spirit as placed within the body of Christ. It ended, but you see once that main separating spirit of division was pulled down… It released the Lord Jesus… to get this thing underway… Amen.

このメッセージでコープランドは、「プロテスト(抗議)」は終わり、もはや自分たちは「プロテスタント(抗議する者)」ではなくなったと教えています。

MEMO
ちなみに、ケネス・コープランドは2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)の終焉を「預言者」として宣言した人物です(Biblicalサイトの「ケネス・コープランド:COVID 19の終焉宣言」を参照)。この出来事は、コープランドを信頼してよいかどうかを判断するよい目安になります。

この集会にフランシスコ法王の特使として招かれていたトニー・パーマー(Tony Palmer)も、同様のことを語っています。パーマーは、ケネス・コープランドの影響を受けたカリスマ派クリスチャンで、その後に聖公会の聖職者となり、ローマに渡ってカトリック教会の協力者になったという経歴があります。フランシスコ法王が法王に就任する前に、アルゼンチンで個人的な師弟関係を結んでいた人物でもあります。パーマーは次のように語っています。

 最初の千年間、教会は一つで、カトリック教会と呼ばれていたことを私たちは知っています。カトリックという言葉は「普遍的な」という意味で、ローマカトリックという意味ではありません。もし皆さんが新しく生まれている(ボーン・アゲインしている)なら、手を挙げてください。皆さんはカトリック教徒です。
本来自分のものであるものを取り戻しましょう。私たちはカトリックなのです。そして、最初の千年の終わりに分裂が起きました。教会が正統派の東方教会と西方教会に分かれ、その五百年後にルターが抗議(プロテスト)を行ったのです。千五百年の間に、教会は3つになりました。いや、3つの教会ではなく3つの教派です。そして、ルターが抗議をして以降、3万3千もの新しい教派が誕生しました。
多様性は神からのものだと理解しています。しかし、分裂は邪悪なものです。…抗議はすでに15年前に終わっています。私は友人であるプロテスタントの牧師にこう問いかけます。「もはや抗議をしていないのであれば、どうしてプロテスタント教会であり続けることができるのか、と」。
― “Pope Francis Sends Video Message to Kenneth Copeland – Lets Unite,” Prove All Things…

We know that the first 1000 years there was one church, it was called the Catholic church. And the word Catholic means ‘universal’, it doesn’t mean Roman Catholic.
If you’re born again, raise your hand if you’re born again, you’re a Catholic.
Take back redeem what belongs to you. We are catholics. And then there was the split at the end of the first millennium. We had the orthodox east and west. Two churches. Then 500 years later, we have Luther in his protest. Three churches in 1500 years. Three denominations not three churches. And then from Luther’s protest onwards 33 000 new denominations.
I’ve come to understand that diversity is divine. It’s division. That’s diabolic…
So the protest has been over for 15 years… I challenge my protestant pastor friends, “if there is no more protest, how can there be a protestant church?”

確かに、ローマカトリック教会と和解をしたルーテル教会などの諸教派は、もはやプロテスタントという名にふさわしくないのかもしれません。パーマーは、新生した(ボーン・アゲイン)クリスチャンはみな「カトリック」であると言い、プロテスタント教会もカトリック教会の一部であると主張しています。明らかに、カトリック教会はキリスト教全体をまとめ上げる「普遍的教会」を目指しています。

ローマカトリック教会との一致を進めるカリスマ派指導者は、ケネス・コープランドだけではありません。新使徒運動(NAR)の指導者は、ほとんどそうだと言っていいでしょう。NARの父と呼ばれるC・ピーター・ワグナーなどは、NARをプロテスタントと位置付けるのはやめ、別のブロックに分類しています(Biblicalサイト「現代の使徒運動が抱える問題点(1)『現代に使徒はいない』」を参照)。NARの使徒や預言者と呼ばれる人々とローマカトリック教会の親密な関係は、以下の写真を見るだけでもわかると思います。

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フランシスコ法王とハーベスト・ロック教会の「使徒」チェ・アン
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フランシスコ法王とベテル教会の「預言者」クリス・バロットン
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フランシスコ法王とIHOPKCのマイク・ビックル
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フランシスコ法王とトロント・エアポート・クリスチャンフェローシップのジョン・アーノットら

ローマカトリック教会とNARの指導者が親密になるのは、両者の教えの親和性が高いことも理由の一つでしょう。

カトリック NAR
聖書自体よりも、聖書を解釈する教会に権威がある。 聖書よりも、教会を指導する使徒・預言者に権威がある。
司祭は使徒的継承で初代教会から権威を受けた使徒の集団である。 現代にも初代教会から使徒的権威を受け継いだ使徒がいる。
聖書に外典(アポクリファ)を追加し、正典以外のものを付け加えている。 聖書以外にも、使徒や預言者の預言を「聖書外啓示」として教えている。

MEMO
新使徒運動(NAR)について詳しくはBiblicalサイトの記事「新使徒運動(NAR)」をご覧ください。

異邦人教会とメシアニックジューの和解

ローマカトリック教会は、イエスを信じるユダヤ人(メシアニックジュー)との一致も進めています。ローマカトリック教会とメシアニックジューの一致を推進している運動の一つが、「第二エルサレム会議に向けて」(Toward Jerusalem Council II:TJCII)です。ただ、この運動はローマカトリック教会以外にも、正教会、聖公会、カリスマ派教会などが参加しており、異邦人教会とメシアニックジューの和解を求める運動となっています。

この運動を推進しているメシアニックジュー側の主要団体は「ティックーン」というユダヤ人宣教団体です。ティックーン代表のダン・ジャスターは、NARの父と呼ばれるC・ピーター・ワグナーに「ユダヤ人の使徒」と呼ばれた人物で、新使徒運動(NAR)の神学を信奉しています。

TJCIIは、ユダヤ人と異邦人の和解をテーマに、ローマとエルサレムだけでなく、米国や東アジア(日本、韓国、中国など)など世界各地で推進されています。詳しくは、Biblicaサイトの記事「TJCII(Toward Jerusalem Council II:第二エルサレム会議に向けて)は聖書的な運動ですか?」を参照してください。

一致できない唯一の存在

ここまで見てきたように、フランシスコ法王は、キリスト教のあらゆる教派に働きかけ、一致運動を進めています。フランシスコ法王は、教会一致運動について次のように語っています。

私たち自身が一致していなければ、諸国民を集めてくださるキリストの愛をどうして宣べ伝えることができるでしょうか。
― Christopher White, “Pope Francis apologizes for Catholic wrongs against Orthodox believers, urges unity,” National Catholic Reporter, 4 Dec 2021

“How can we proclaim the love of Christ who gathers the nations, if we ourselves are not united?”

教会一致は、フランシスコ法王のミッションとも言えるものです。

ただ、教会の一致を目指すフランシスコ法王にとって、目の上のたんこぶとも言える人々がいます。それが、聖典を文字どおりに信じる「ファンダメンダリスト(原理主義者または根本主義者と訳される)」と呼ばれる人々です。フランシスコ法王は、次のように語っています。

ファンダメンタリズムはすべての宗教にある病です。…宗教的ファンダメンタリズムは宗教的ではありません。神がいないからです。それは偶像礼拝です。金銭の偶像礼拝と同じです。…私たちカトリックにも、一部、いや多くのファンダメンタリストがいます。この人々は、絶対的な真理を信じ、中傷や偽情報で他の人々をおとしめて汚し、悪を行っています。
ー FR. GERALD A. ARBUCKLE, SM, PhD, “Fundamentalism: An Enemy of the Common Good,” CHA, November-December 2016

Fundamentalism is a sickness that is in all religions … Religious fundamentalism is not religious, because it lacks God. It is idolatry, like idolatry of money … We Catholics have some — and not some, many — who believe in the absolute truth and go ahead dirtying the other with calumny, with disinformation, and doing evil.

フランシスコ法王は、ファンダメンタリズムは「病気」であり、ファンダメンタリストは「悪を行っている」と述べています。そして、その理由として、ファンダメンタリストが「絶対的な真理を信じている」ことを挙げています。この発言を裏返すと、フランシスコ法王は絶対的な真理があると信じていないということになります。また、「私たちカトリックにも、一部、いや多くのファンダメンタリストがいます」という言葉から、カトリック教会の内部にも、フランシスコ法王を批判するファンダメンタリストがいることがわかります(ただ、カトリックの伝統に忠実で、聖書に忠実という訳ではないこともある)。

このフランシスコ法王の発言を読むと、1563年のトレント公会議の時代からあまり変わっていないと思わされます。トレント公会議は、ルターなどによる宗教改革に対抗するための「反宗教改革」のために開催された会議です。この会議では、禁書リスト(Index Librorum Prohibitorum)が作成されました。このリストでは、ルターやツヴィングリの著作などと共に、各国語に訳された聖書も禁書とされました。その理由として、リストには次のように書かれています。

このリストの第一級の著者(訳注:ルターなど、最も危険と判断された著者)が翻訳した新約聖書は、誰にも許可しない。それを読むと、通常、読者にとって大きな危険が伴い、ほとんど役に立たないからである。…聖書をどこでも、差別なく、現地の言語で配布することを許可するなら、人の大胆な行動により、善よりも害が生じることは経験上明らかである。…
― “Index of Prohibited Books

Translations of the New Testament made by authors of the first class of this list shall be permitted to no one, since great danger and little usefulness usually results to readers from their perusal… Since it is clear from experience that, if the sacred books are permitted everywhere and without discrimination in the vernacular, there will by reason of the boldness of men arise therefrom more harm than good…
[/memo]

ローマカトリック教会は、母国語に訳された聖書を民衆が読み、真理に触れたなら、真理に立って大胆に行動するようになることを恐れました。いわば聖書に立って行動するファンダメンタリストを恐れたわけです。このような態度は、2コリント4:2に記されているパウロの姿勢とは対照的です。

…恥となるような隠し事を捨て、ずる賢い歩みをせず、神のことばを曲げず、真理を明らかにすることで、神の御前で自分自身をすべての人の良心に推薦しています。

教会の一致は、聖書の真理に近付くことで実現します。真理を軸に一致が生まれるためです。真理を無視した一致は、聖書の言うところの一致ではありません。聖書の言う一致は、みことばにある一致です。みことばという絶対的な真理があるので、国や文化といったさまざまな違いを越えて、あらゆる人が一致できるのです。

まとめ

以上見てきたように、現在は、ローマカトリック教会を中心にした教会一致運動により、カトリック、正教会、プロテスタントの対立構造は解消されつつあります。

ただ、フランシスコ法王の発言からうかがい知ることができるように、それは聖書の真理を追求した結果の一致ではありません。

終末時代に反キリストが到来することを警告した2テサロニケ2:9~10では、次のように言われています。

9 不法の者(反キリスト)は、サタンの働きによって到来し、あらゆる力、偽りのしるしと不思議、 10  また、あらゆる悪の欺きをもって、滅びる者たちに臨みます。彼らが滅びるのは、自分を救う真理を愛をもって受け入れなかったからです。 

ここでは、「自分を救う真理」を受け入れなかったので、人々が滅びたと言われています。人が神に救われるのは真理によるのであって、一致によるのではありません。

この記事では教会一致運動を紹介しましたが、フランシスコ法王が追求する一致運動は教会の中にとどまりません。次の記事では、フランシスコ法王を中心に推進される宗教間一致運動を取り上げます。

参考資料

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