イスラエルがトルコと国交正常化、シリアでもイラン勢力が後退か

イスラエル首相とトルコ外相

イスラエルと周辺国の間で緊張緩和が進んでいること示すニュースが立て続けに入っている。これは中東の平和にとって良い兆候だが、旧約聖書のエゼキエル書に記されている預言によると、別の視点も必要であることがわかる。

イスラエルがトルコと国交正常化

トルコとイスラエルは、2018年に起きた米国大使館のエルサレム移転をめぐる騒動で、互いの大使を本国に召還して関係が冷え切っていた。しかし、今回、それぞれの大使を4年ぶりに任命し、国交を正常化することに合意した。ロイター通信は、この合意について次のように伝えている

この地域の2大国、イスラエルとトルコは、2018年にガザとの国境で起きた米国大使館のエルサレム移設に反対する抗議行動で、イスラエル軍との衝突で60人のパレスチナ人が死亡したことをめぐり、大使を追放し合っていた。
しかし、両国は長らく緊張状態にあった関係を修復しようと努めており、「エネルギー」が協力関係を結ぶ可能性のある重要な分野として浮上してきている。
イスラエルのヤイル・ラピード首相官邸は、水曜日(8月17日)に両国が完全な外交関係を回復することに合意したと発表した。ラピード首相官邸は、同首相とトルコのエルドアン大統領との会談後の声明で、「2国間の関係を再び完全な外交関係へと格上げし、大使と総領事を戻すことが決定された」と述べている。
ー James Mackenzie and Ece Toksabay, “Turkey, Israel to re-appoint ambassadors after four-year chill,” Reuters, 18 Aug 2022

The two regional powers had expelled ambassadors in 2018 over the killing of 60 Palestinians by Israeli forces during protests on the Gaza border against the opening of the U.S. Embassy in Jerusalem.
But they have been working to mend long-strained ties with energy emerging as a key area for potential cooperation.
Israeli Prime Minister Yair Lapid’s office said on Wednesday the two countries decided to restore full diplomatic ties.
“It was decided to once again upgrade the level of the relations between the two countries to that of full diplomatic ties and to return ambassadors and consuls general,” Lapid’s office said in a statement following a conversation between the prime minister and Turkish President Tayyip Erdogan.

イスラエルは、アラブ首長国連邦やバーレーンなどのアラブ諸国との国交正常化に続き、トルコとの関係修復により、安全保障をめぐる環境が大きく改善している。

また、イスラエルの目下の敵はイランだが、イランに関してもよいニュースが入ってきている。

シリアでイラン勢力が後退か

イランは、シリア領土内に拠点を築いてレバノンのヒズボラやガザ地区のハマスに武器を供与し、イスラエルに対するテロ戦争を支援している。そのため、イスラエルはたびたびシリア国内のイラン拠点に爆撃を行い、イランの敵対活動を妨げていた。ただ、シリアにはロシア軍が展開しており、このロシア軍とイスラエルの軍事衝突が起きる可能性が危ぶまれていた(記事「イスラエル国防相がロシアから攻撃を受けたことを認める」参照)。

そのような中で、ロンドンを拠点とするアラブ紙の『Asharq Al-Awsat』は、ロシアがイランに対してシリア西部、中央部の要衝から撤退するよう勧告したと報道している。

シリア政権筋が明らかにしたところによると、ロシアはイラン民兵に対し、シリアのハマ州西部の軍事拠点と、シリア中部と西部の拠点からの撤退を要求しているという。
この命令は、ここ数日間で激しさが増しているイスラエルの空爆で民兵が標的にされるのを避けたいとの思いから出たものだ。
ー Firas Karam, “Russia Calls on Iran to Evacuate Military Positions in Central, Western Syria,” Asharq Al-Awsat, 2 Sep 2022

Russia has demanded Iranian militias withdraw from military positions west of Syria’s Hama province as well as from positions in central and western Syria, Syrian regime sources revealed.
The order stems from desire to avoid the militias being targeted by Israeli raids, which have stepped up in recent days.

この勧告にイランが従うかどうかは不明だが、ロシアがシリア国内でイスラエルと衝突することを避けようとしている意図は明白であり、地域の平和にとっては一歩前進ととらえることができる。

預言的意味

このようなイスラエルと周辺国との緊張緩和は、旧約聖書のエゼキエル書でも預言されている。エゼキエル38:8、11では次のように言われている。

8  多くの日が過ぎて、おまえは徴集され、多くの年月の後、おまえは、一つの国に侵入する。そこは剣から立ち直り、多くの国々の民の中から、久しく廃墟であったイスラエルの山々に集められた者たちの国である。その民は国々の民の中から導き出され、みな安らかに住んでいる。 ……
11  こう言うだろう。「私は無防備な国に攻め上ろう。安心して暮らす平穏な者たちのところに侵入しよう。彼らはみな城壁もなく住んでいる。かんぬきも門もない」と。 

エゼキエル38~39章は、終わりの時代にロシアやイラン、トルコを中心とする諸国連合がイスラエルに侵略すると預言している(「ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)」の記事一覧)。この侵略が起こるのは、上記の聖句で示されているように、イスラエルが「安心して暮らしている」時である。つまり、表面上の平和がイスラエルに訪れている時に侵略が起こると預言されている。

火種は残っている

トルコはイスラエルと関係を正常化したとは言え、両国間の火種は残っている。トルコの外相は次のように語っている。

トルコ外相は、関係回復をしたとはいえ、それはパレスチナ人への「支援」をやめることを意味しないことを明らかにしている。
「私たちはパレスチナの大義をあきらめてはいない。……(パレスチナ問題について)大使を通じて私たちのメッセージを直接伝えることが重要だ」とカヴソグル外相は主張している。
ー Tyler Durden, “Israel & Turkey Announce Full Normalization Of Ties,” ZeroHedge, 18 Aug 2022

The Turkish Foreign Minister clarified, however, that the restoration of ties does not mean that his country will abandon what he referred to as its “support” for the Palestinian people.
“We are not giving up on the Palestinian cause… It is important for our messages to be conveyed directly through the ambassador (on the Palestinian issue),” Cavusoglu asserted.

また、ロシアとイスラエルの関係も、イスラエルのウクライナ支援やヨーロッパへの天然ガス輸出をめぐって、潜在的な火種がくすぶっている。エゼキエルの預言では、表面的な平和がエゼキエル戦争が起こる条件の一つであることを念頭に置いておく必要がある。

参照資料

写真:GPO/Boaz Oppenheim

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