孤立するスーダンに接近するロシア

ポートスーダンの港

アフリカの紅海沿岸の国、スーダンは、2021年10月25日にアブデル・ファタハ・ブルハン将軍が軍事クーデターで政権を奪取して以降、米国やEUからの資金援助が途絶え、国際的に孤立している。そのような中で、スーダンとの関係を深めているのがロシアだ。エジプトの『Al-Monitor』紙は、ロシアが新しい海軍戦略を定め、紅海にあるスーダンの港を「ロシア海軍の重要拠点」にすることを目指していると報道している。

2022年7月31日に、ロシアのプーチン大統領は、同国の新しい海洋政策を承認する大統領令に署名した。この文書は、海洋政策の目標と目的を再定義し、ロシア海軍の海洋上での目的を重視し、米国およびNATOとの対決姿勢を強化するものである。……シリアのタルトゥース港を除いて、ロシアが本格的に海軍の拠点にしようとした外国の海洋施設はポートスーダン港のみである。

On July 31, 2022, Russian President Vladimir Putin signed a decree approving the country’s new Maritime Doctrine. This conceptual document redefines the goals and objectives of maritime policy, emphasizes the oceanic purpose of the Russian navy and strengthens the confrontation with the United States and NATO… With the exception of the Syrian port of Tartus, the only real foreign maritime facility where Russia really intended to have a serious presence was Port Sudan.

『All Arab News』によると、実際にロシアはスーダンの高官を招いて交渉を進めており、スーダン側も前向きな姿勢を示しているという。

3月には、スーダン主権評議会副議長のモハメド・ハムダン・ダガロ(ヘメディ)将軍が8日間にわたってロシアを訪問し、ポートスーダン市にロシア海軍の基地を設けることを歓迎した。
ロシアはスーダンに深い関心を持ち、特に準軍事組織である「ワグナーグループ」を通じて、次第にスーダンで存在感を増しつつある。
この民間軍事会社は、金などの鉱業権益を取得する一方で、ロシアのための情報戦を展開していたと、米国のシンクタンク「Foreign Policy Research Institute」のシニアフェロー、スティーブン・ブランクが4月に書き記している。
ー “Russia deepening ties with Sudan, sets sights on establishing naval base,” All Arab News, 10 Aug 2022

In March, the Sudan Sovereignty Council deputy chairman, Gen. Mohamed Hamdan Dagalo, Hemedti, visited Russia over eight days, where he welcomed a Russian naval base in the city of Port Sudan.
Russia has a deep interest in Sudan and has gradually embedded itself in the country, especially through its paramilitary organization, the Wagner Group – CHVK Vagner.
The private military company gained gold and other mining concessions, while conducting information-warfare operations on Russia’s behalf, wrote Stephen Blank, senior fellow at the Foreign Policy Research Institute U.S. think tank, in April.

上記の引用にもあるように、ロシアはスーダンの港だけでなく、金鉱にも目を付けている。ロシアは、ウクライナ侵攻による制裁を受けて暴落した自国通貨ルーブルの価値を下げ止めるため、今年の3月下旬にルーブルと金の交換を一定レートで保証する「金本位制」を採用している。この金本位制を維持するには、大量の金が必要になる。

そのような中で、ロシアがスーダンから大量の金を持ち出していたという報道がCNNによって行われている。CNNは、「クッキー」を輸出すると申請されていた航空機の検査に入ったスーダンの空港職員の証言として、次のように報じている。

貨物室の中には、色とりどりのクッキーの箱が並んでいました。その下には、木箱に梱包された、スーダンで最も貴重な資源が隠されていました。金です。ざっと1トンはありました。
この2月の出来事は、スーダンの複数の当局筋がCNNに語ったものです。このようなロシアの金塊密輸フライトは、アフリカ第3位の貴金属生産国であるスーダンから、過去1年半の間に少なくとも16回は飛び立っています。
ー Nima Elbagir, et. al, “Russia is plundering gold in Sudan to boost Putin’s war effort in Ukraine,” CNN, 29 Jul 2022

Inside the hold, colorful boxes of cookies stretched out before them. Hidden just beneath were wooden crates of Sudan’s most precious resource. Gold. Roughly one ton of it.
This incident in February — recounted by multiple official Sudanese sources to CNN — is one of at least 16 known Russian gold smuggling flights out of Sudan, Africa’s third largest producer of the precious metal, over the last year and a half.

この証言によると、ロシアはウクライナ侵攻の1年以上も前からスーダンから金を持ち出していたということになり、危機に陥った場合に金本位制を採用するという政策が周到に準備されていた可能性がある。

スーダンは、旧約聖書のエゼキエル38章~39章の「ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)」の預言に登場する「クシュ」であるとする有力な説がある。このクシュは、終末時代にイスラエルを侵攻する連合国の一つとして挙げられており、その連合国の中心となるのがロシアである。スーダンがロシアと関係を深め、自国の港をロシア軍に解放するという動きは、エゼキエルの預言と関係している可能性がある。

MEMO
エゼキエル戦争に参加する国については、記事「ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)の参加国」をご覧いただきたい。

ただし、スーダンは「アブラハム合意」を受け入れ、2021年1月6日にイスラエルとの国交正常化に合意する文書に署名している。スーダンとイスラエルの関係が今後どうなるかは、この合意が新しい軍事政権によって維持されるかどうかにかかっている。

参考資料

写真:Claus Bunk (Creative Commons Attribution 3.0)

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