イスラエルのヤイル・ラピード首相が、9月22日に開かれた国連総会での演説で、イスラエルとパレスチナの二国家が共存する「二国家共存案(Two-State Solution)」への支持を表明し、論議を呼んでいる。『Israel Today』誌は、この演説を次のように報道している。
イスラエルのヤイル・ラピード首相は、木曜日(9月22日)に、ニューヨークの国連総会で待望の演説を行った。この重要な国際的舞台で、首相は二国家共存案への支持を表明し、この案に新たな息吹を吹き込んだ。首相はこう語っている。「二国家共存案は、イスラエルの安全保障、経済、子供たちの未来にとって正しいものです」
― Jason Silverman, “Returning to the Two-State Solution? Lapid’s Controversial UN Speech,” Israel Today, 23 Sep 2022
Israeli Prime Minister Yair Lapid’s highly anticipated speech at the UN General Assembly in New York on Thursday seemingly gave a fresh breath of life to the two-state solution, as he declared his support for the idea on this important international stage, saying that “the two-state solution is the right thing for Israel’s security, its economy and our children’s future.”
> 二国家共存案とは二国家共存案とは
二国家共存案については、次の読売新聞の説明がよくまとまっている。
二国家共存は、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルとパレスチナの平和的な共存を図る和平案を指す。パレスチナによるヨルダン川西岸とガザ地区での暫定自治を認めた1993年の「オスロ合意」以降、和平交渉の基本方針となってきた。しかし2014年以降、和平交渉は頓挫している。
― 読売新聞「イスラエル首相、パレスチナ問題で『2国家共存の理念を支持する一人だ』…国連で異例の言及」(2022年9月23日)
この案を実現するには、イスラエルからパレスチナ人(アラブ人)が統治する地域を分離し、パレスチナ国家を樹立する必要がある。この案に対して、イスラエルでは与党、野党の両方から批判の声が上がっている。
> ラピード首相の演説に対する反響ラピード首相の演説に対する反響
ラピード首相の演説に対し、ラピード首相と連立与党を組むナフタリ・ベネット前首相は次のように語っている。
はっきりと言っておく必要がある。地中海とヨルダン川の間に別の国家が存在する余地はない。……それは、この土地に対する権利が私たちにあるというだけでなく、パレスチナ人との外交プロセスが成功する見込みはゼロだからだ。
― “Why is everyone opposing Lapid’s two-state solution speech? – editorial,” The Jerusalem Post, 22 Sep 2022
“We need to say clearly: There is no place for another state between the Mediterranean and the Jordan River… Not just because of our right to the land but also because practically there is no chance of a diplomatic process with the Palestinians succeeding.”
また、連立政権の現役閣僚であるギデオン・サアル法相も、パレスチナ国家の樹立に反対してこう語っている。
ユダヤとサマリアにテロ国家を設立することは、イスラエル国家の安全を危険にさらすことになる。イスラエルのほとんどの国民と国会議員は、これを許さないだろう。
― “Why is everyone opposing Lapid’s two-state solution speech? – editorial,” The Jerusalem Post, 22 Sep 2022
“Establishing a terror state in Judea and Samaria will endanger Israel’s national security. Most of the people in Israel and their representatives will not allow this to happen.”
連立与党内でもこのような反対の声があることに加えて、ラピード首相は次の選挙があるまでの暫定首相という立場であるため、近い将来に二国家共存案が実現する可能性は低い。
> 二国家共存案の歴史二国家共存案の歴史
二国家共存案は、ラピード首相が唐突に言い出したような印象があるが、歴史的に見るとイスラエルの歴代政権が支持してきた政策である。実際に、ラピード首相の演説を痛烈に批判しているベンヤミン・ネタニヤフ元首相も、2016年の国連総会で次のように語っている。
私は平和をあきらめてはいない。私は、2つの民族が2つの国家で平和的に共存するというビジョンに引き続きコミットしている。これまで以上に、今日のアラブ世界で起きている変化が、その平和を推進するためのまたとない機会となると信じている。
― “Why is everyone opposing Lapid’s two-state solution speech? – editorial,” The Jerusalem Post, 22 Sep 2022
“I have not given up on peace. I remain committed to a vision of peace based on two states for two peoples. I believe as never before that changes taking place in the Arab world today offer a unique opportunity to advance that peace.”
また、ネタニヤフ政権以前のバラク、シャロン、オルメルトの各政権でも、二国家共存案はイスラエルが正式に推進する政策だった。
この二国家共存案に対する支持が近年失われているのは、ガザ撤退の失敗と、アブラハム合意によるアラブ諸国との和平の影響が大きい。
実は、事実上、パレスチナ国家はすでにガザで実現している。イスラエルは、アリエル・シャロン首相の時代(2005年)に和平条約の締結を待つことなく、ガザから一方的に撤収し、パレスチナ自治政府に明け渡した。ガザには多数のユダヤ人入植者がいたが、この時に入植地をすべて放棄して退去している。イスラエル軍もガザから完全に撤収し、現在駐屯している部隊はない。このガザ撤退で両国に平和が訪れることが期待されたが、そうはならなかった。分離後に行われたパレスチナ自治区選挙で、イスラム教過激派のハマスが勝利し、ガザ地区を占拠することになったためである。それ以降、ガザからイスラエルにロケットが降り注ぐようになり、ガザ撤退は平和ではなく、テロ攻撃をもたらす結果に終わった。
また、米トランプ政権時代には二国家共存案はまったく進展しなかったが、アラブ首長国連邦やバーレーンなどアラブ諸国との平和条約の締結に成功した。この「アラブハム合意」で、二国家共存が実現しなくても和平は実現可能であることが証明された。
以上のような歴史的経緯で、二国家共存案は忘れ去られた存在になっていたが、米バイデン政権の意向もあって、ラピード首相が今回新たな息吹を吹き込む形となった。
> 二国家共存案の預言的意味二国家共存案の預言的意味
二国家共存案は、すぐには実現しないが、イスラエルを分割統治するという案は、消えてなくなることもない。ヨエル3:2で、次のように言われているためである。
わたしはすべての国々を集め、彼らをヨシャファテの谷に連れ下り、わたしの民、わたしのゆずりイスラエルのために、そこで彼らをさばく。彼らはわたしの民を国々の間に散らし、わたしの地を自分たちの間で分配したのだ。
これは「ハルマゲドンの戦い」と呼ばれる終末時代の最後に行われる世界大戦の預言である。この戦いでは、全世界の国々がイスラエルを攻めるために上ってくる。この国々を神がさばく理由が、この箇所では「わたしの地を自分たちの間で分配した」からだと言われているのである。この「わたしの地」とは、神がイスラエル民族に与えた「約束の地」であり、現在のイスラエルである。つまり、イスラエルの土地の分割が、神の裁きが下るきっかけとなるのである。
イスラエルの土地の分割には、このような預言的な意味があるので、二国家共存案の進展は今後も注目していく必要がある。
写真:United Nations
コロナウイルス、ワクチン、イスラエルの政治的な状況、イスラエルの土地の状況、アメリカや世界中のクリスチャンの霊的な状況、様々なものが終わりの時代の到来を予期させるものになっていると感じます。
主の日は近いです。
今はただ一人でも多くの人に福音が伝えられ、信仰告白、救いに導かれる人が起こされるように毎日をひたすらに歩んで行き、聖化の段階を歩めるようにしていきたいです。
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今は、決定的な証拠はありませんが、これからの時代を予想させるものであると感じています。
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