イスラエル軍と米軍がイラン空爆の合同演習の実施へ

F35

去る11月22日(火)に、イスラエル軍はイランとイランの代理勢力への空爆を想定した合同軍事演習を近く米軍と実施すると発表した。イスラエル軍と米軍が合同軍事演習を行うことはめずらしくないが、イランという目標を明言したことは異例だ。

イスラエルの参謀総長が訪米

この発表に先立って、11月21日(月)にはイスラエルの参謀総長アビブ・コハビ中将が、ワシントンの国防総省およびホワイトハウスを訪れ、米国政府関係者と一連の会談を行っていた。この会談の後、コハビ中将は次のように語っている。

われわれは、イランおよび中東地域でイランの代理勢力となっているテロリストに対する作戦計画と協力を加速する必要がある重大な局面を迎えている。…最大の同盟国との深い協力関係は、これまでも、そしてこれからも、われわれの国家安全保障の中心的な柱である。
― Ariel Oseran, “Israel, U.S. to simulate attacks against Iran and its proxies,” i24NEWS, 23 Nov 2022

We are at a critical point in time that requires the acceleration of operational plans and cooperation against Iran and its terrorist proxies in the region… Our deep cooperation with our greatest ally was and continues to be a central pillar of our national security.

一方、イスラエル軍情報部長のアハロン・ハリバも、「イランとの直接対決の可能性が高まっており、そのための準備をしなければならない」と警告を発したことを『Middle East Monitor』誌が報じている。

イランとの核合意交渉は失敗

こうした動きの背景には、米バイデン政権が中心になって推進していたイランとの核合意交渉が失敗に終わったという見方がある。『Israel Today』誌の記事は、次の2つのイランの要求を米政府が拒否したために交渉が決裂したと解説している。

  1. 国際的な核の監視機関である国際原子力機関(IAEA)に対し、イランの核活動に関する調査を打ち切るよう圧力をかけること。バイデンはこの要求に屈しない構えだった。
  2. イラン側は、将来の米政権がこの協定から再び離脱することはないという拘束力のある誓約を求めた。これに対する米国側の回答は、たとえそうしたいと思っても、将来の政権を拘束する方法はない、というものだった。
    ― Ariel Kahana, “The Iran Deal Is Dead. What Now?,” Israel Today, 23 Nov 2022
    1.To exert pressure on the international nuclear watchdog, the International Atomic Energy Agency (IAEA), to close its investigations of Iran’s nuclear activity. Biden was not prepared to give in to this demand.
    2.The Iranians asked for a binding pledge that any future US administration would not withdraw from the agreement once again. The US response to this was that, even if they wanted to, they had no way of shackling any future administration down.

核合意交渉の失敗が明らかとなってきた今、軍事オプションが現実味を帯びてきた形となっている。

イスラエル空軍の準備が進む

イランとの核合意がすでに暗礁に乗り上げていた8月の報道では、イスラエル空軍のステルス攻撃機F-35がイランの制空権に侵入する演習を行っていたと言われている。

アラビア語のウェブサイト「Elaph」によると、イスラエルとアメリカは、イランへの空襲とペルシャ湾でイラン軍艦の拿捕を行う演習をしていたとされている。また、イスラエルはここ数か月間、イランの領空に航空機を飛ばせていたと言われている。
― JNS, “Report: Israeli F-35s Breached Iranian Airspace, Repeatedly, During Recent Exercise,” Israel Today, 25 Aug 2022

Israel and America simulated air raids on Iran and the seizure of Iranian warships in the Persian Gulf, according to the Arabic website Elaph. It also said Israel had flown aircraft in Iranian airspace in recent months.

イスラエル政府の一貫した姿勢

イランに対するイスラエル政府の姿勢は、どの政権になっても一貫している。イランの核武装は絶対に許さないという姿勢だ。まもなくベンヤミン・ネタニヤフに首相の座を譲ることになるヤイル・ラピード首相は、8月の声明で次のように語っている。

イスラエルのヤイル・ラピード首相は、水曜日(8月24日)に次のように述べている。「(イスラエルは)過激で暴力的なイスラム主義政権から、核を頭上に放たれる脅威を受けながら生きていく覚悟はない。このようなことは起こらない。なぜなら、われわれがそうさせないからだ」
― JNS, “Report: Israeli F-35s Breached Iranian Airspace, Repeatedly, During Recent Exercise,” Israel Today, 25 Aug 2022

Israeli Prime Minister Yair Lapid said on Wednesday that Israel is “not prepared to live with a nuclear threat above our heads from an extremist, violent Islamist regime. This will not happen. Because we will not let it happen.”

このように、中道左派と言われるラピード首相であっても、イランに対しては一貫して強硬姿勢を示している。11月の総選挙の結果を受け、首相に選出される見込みのベンヤミン・ネタニヤフは、タカ派で知られる政治家だ。今後のイスラエルの対イラン政策が注目される。

参考資料

写真:Major Ofer, Israeli Air Force (CC BY 4.0)

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