キエフの牧師「ウクライナにとどまり、仕える」

キエフ

2022年2月24日に、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。

今、ウクライナのために祈るために、また教会のあり方を考える上でも参考になると思う一人のウクライナ人牧師の手記を一部翻訳して紹介します。

ウクライナの首都、キエフにあるイルピン聖書教会のヴァシル・オストレイ牧師は、ロシア軍の脅威が迫り、ウクライナ在住の宣教師全員に国外脱出が勧告される中、家族6人でウクライナにとどまることを決めました。オストレイ牧師は、ロシアの侵攻直前に次のように記しています。1

教会の対応

戦争の脅威が高まっている時、教会はどのように対応すればいいのでしょうか。社会が絶え間ない恐怖に包まれている時、どうすればいいのでしょうか。私は確信しています。教会が危機の時に社会と関わりを持たないなら、平和の時にも社会と関わりを持てません。

How should the church respond when there is a growing threat of war? When there is constant fear in society? I’m convinced that if the church is not relevant at a time of crisis, then it is not relevant in a time of peace.

オストレイ牧師はこのように語り、過去にあった同様の出来事に触れています。

国としては、2014年にすでに経験していることです。当時、多くの教会が、腐敗し独裁的なヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権に反対する人々を積極的に支援しました。独立広場には祈りのテントがありました。クリスチャンたちは温かい食事やお茶を配りました。また教会は、治安部隊に迫害された抗議者たちの避難所として門戸を開きました。
一方、独裁者政権を公然と支持し、デモ隊を批判する教会もありました。他の教会は、見て見ぬふりをしました。あたかも何事もなかったかのように、沈黙を守っていました。

As a country, we went through this already in 2014. In those days, many churches actively supported those who rebelled against the corrupt and authoritarian regime of Viktor Yanukovych. There was a prayer tent in Independence Square. Christians distributed warm meals and hot tea. Churches opened their doors as a shelter for protesters persecuted by security forces.
Meanwhile, there were churches that openly supported the dictator’s regime and criticized the protesters. Other churches tried to ignore the elephant in the room. They kept silent about the problem and lived as if nothing was happening.

この時の教会の対応は次のような違いを生み出したと言います。

結局、社会問題から距離を置いた教会や、腐敗した支配者を支持した教会は、ウクライナの人々の間で評判を落とすことになりました。逆に、試練の時に人々に寄り添ってきた教会は、社会から最も高い信頼を得ました。

In the end, churches that distanced themselves from social issues and those that supported the corrupt rulers have suffered reputational losses among the population of Ukraine. Conversely, churches that have been with people during testing times have received the highest trust from society.

この時の経験に基づいて、イルピン聖書教会では、戦争が起こった場合に備えて負傷者を手当てするための研修を行っていたと言います。危機の中にある国の教会の対応として考えさせられます。

教会の戦い

オストレイ牧師は、国が危機に陥っている中での教会の戦いについて、次のように記しています。

私たちは、教会は霊的戦いの場であると信じています。緊張が高まる中、私たちの教会は一週間の断食と祈りを発表し、毎晩集まって願いを神のもとに持っていきました。…そうして一週間が経過した時、私たちに耐え抜く内なる力が生まれました。共に祈ることにより、確信と平安を得ました。私たちは、神が私たちとともにおられることを信じています。そして、それが最も大切なことなのです。

We believe the church is a place of spiritual struggle. As tensions have risen, our church announced a week of fasting and prayer, gathering every night to bring our requests to God… At the end of the week, those moments produced in us an inner strength to persevere. Through communal prayers we’ve gained confidence and peace. We believe God is with us, and that is the most important thing.

また、戦時下の実際的な働きについても、次のような準備を行っています。

必要であれば、教会の敷地を避難所にすることができます。地下室も充実していて、暖房器具の配備や、戦時病院にする場所も用意できています。そして、それを実現するために、対策チームも作っています。戒厳令が発令された場合、燃料や、食料、傷の手当をするための備品などの戦略的物資を供給できるようにしています。さらに、教会の中で誰が医者で、整備士、配管工なのか、また水不足に備えて誰が井戸を持っているのかなどといった情報も集めています。

If necessary, the church premises can be turned into a shelter. We have a good basement. We’re ready to deploy a heating station, as well as provide a place for a military hospital. To make this a reality, we’re creating response teams. If martial law is declared, they’re ready with a strategic supply of fuel, food, and material for dressing wounds. We’ve even gathered information on who in the church are doctors, mechanics, plumbers—even who has wells in case of a water shortage.

そして、教会の使命について、最後に次のように語っています。

教会は国家のように戦うことはできないかもしれませんが、それでも私たちにはこの戦いで果たすべき役割があると信じています。弱者をかくまい、苦しむ者に仕え、傷ついた人々をいやすことです。そうしながら、キリストと福音の揺るぎない希望を提供していくのです。

And while the church may not fight like the nation, we still believe we have a role to play in this struggle. We will shelter the weak, serve the suffering, and mend the broken. And as we do, we offer the unshakable hope of Christ and his gospel.

まとめ

オストレイ牧師のような現地の状況が報告される一方で、さまざまな真偽の疑わしい情報がクリスチャンの間でも広がっています。特にウクライナではそのような偽情報の拡散が一層激しくなっており、キエフ神学校(KTS)は次のような警告を発しています。2

「人心を操作する偽情報の拡散でパニックを引き起こすことは、敵がまさに求めているものです」と、コミュニケーション学の教授が火曜日(2月22日)に記している。「この戦争は、領土をめぐるものというよりも、私たちの魂と心をめぐるものです」

Generating panic through the spread of manipulative false information is exactly what the enemy seeks,” a communications professor wrote on Tuesday. “This war is not as much for our territories, as it is for our soul and our mind.

今は、イルピン聖書教会のようなクリスチャンの働きを祈りで支える時です。ウクライナの方々に守りがあるように、福音が届けられ、主にある希望と救いを見出すことができるように祈ります。

  1. Vasyl Ostryi, “To Stay and Serve: Why We Didn’t Flee Ukraine” [February 24, 2022] (https://www.thegospelcoalition.org/article/church-stayed-ukraine/)

  2. Jayson Casper, “As Russia Invades Ukraine, Pastors Stay to Serve, Pray … and Resist ” [February 24, 2022] (https://www.christianitytoday.com/news/2022/february/russia-ukraine-invasion-putin-war-christian-churches-prayer.html)

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