欧米でインターネット上の言論を規制する法整備が進む

EU議会

現在、欧米では、SNSなどオンラインで行われる言論を規制するための法整備が進んでいる。この動きは日本にも波及してくる可能性が高い。

ヨーロッパ

欧州連合(EU)では、デジタル空間の規制を行う各種法律の施行が始まっている。その一つがデジタルサービス法(DSA)である。

デジタルサービス法(DSA)

SNSなどのオンラインプラットフォームを規制するEUの新しい法的枠組み「デジタルサービス法(DSA)」は、今年の2月17日に全面施行された。デジタルサービス法は、違法なコンテンツや偽情報の拡散を防ぎ、オンライン上でのユーザーの基本的権利を保護するための規制とされている。

この法律に基づいて、EU全体の規制案件のほとんどを担当することになるのは、アイルランドの規制機関「Coimisiún na Meán」である。欧州の『The European Conservative』紙は、次のように報じている。

 「Coimisiún na Meán」は、2月17日(土)のDSAの全面施行に伴い、4億5000万人のEU市民のオンラインコンテンツを検閲するという前代未聞の権限を与えられた。ダブリンを拠点とするこの機関は、議論が盛んになる選挙期間前に、ヘイトスピーチとされるコンテンツを監視・削除するヨーロッパの中枢機関となると多くの人々は見ている。
 ほとんどの主要なデジタルプラットフォームは、ヨーロッパでの根拠地をアイルランドのダブリンに置いている。そのため、75人の職員で構成されるこの機関は、事実上、Facebook、X(旧Twitter)、TikTokなどのプラットフォームを監督する責任機関となっている。どのコンテンツを削除するかも、この機関が決定することになる。数十億ユーロという罰金を企業に科すことも可能で、6月の欧州議会選挙を目前に控えた今、政治的にセンシティブな任務を担うことになる。
― Thomas O’Reilly, “Small Irish Regulatory Authority To Enforce EU’s Digital Services Act for 450 Million Europeans,” The European Conservative, 19 Feb 2024

Coimisiún na Meán will has been granted unprecedented powers to censor online content for 450 million EU citizens from Saturday February 17th as the DSA comes into full effect. The Dublin-based body is seen by many as Europe’s nerve centre for monitoring and removing allegedly hateful content, ahead of a busy election cycle.
The presence of most major digital platforms in Dublin means the 75-person office will effectively become the chief EU moderator for platforms such as Facebook, X (formerly Twitter) and TikTok, deciding which content to remove. It can even issue multi-billion euro fines to corporations, a politically sensitive task ahead of June’s European elections.

デジタルサービス法の下では、規制に違反した企業に対して年間収益の最大6%までの罰金を科すことができる。また、デジタルサービス法では、規制機関には命令に従わない企業を訴追する権限も与えられている。そのため、比較的自由な投稿が許されているX(Twitter)のようなSNSでも、規制当局の命令を受け入れざるを得なくなる可能性が高い。

『The European Conservative』紙の記事では、このデジタルサービス法(DSA)に対して保守派の政治家から懸念の声が上がっているとも報道されている。

欧州の政治家は、DSAの政治的意図をすでに批判しており、タッカー・カールソンによるウラジーミル・プーチン大統領のインタビューは、早くも標的となったとしている。多くの右派ポピュリストは、DSAのいわゆる偽情報と戦うという目的は建前であって、第一の目的は自分たちを弱体化させることだと懸念している。
― Thomas O’Reilly, “Small Irish Regulatory Authority To Enforce EU’s Digital Services Act for 450 Million Europeans,” The European Conservative, 19 Feb 2024

European politicians have already attacked the political intent of the DSA, with Tucker Carlson’s Vladimir Putin interview becoming an early target. Many right-wing populists are concerned that the primary aim of the DSA is to undermine them in the guise of fighting so-called disinformation.

規制機関「Coimisiún na Meán」の広報を担当するのが、保守的な価値観を否定する左派活動家であることも、この懸念を裏付けている。デジタルサービス法の制定にも貢献した活動家のシオナ・ケイヒル(Síona Cahill)は、中絶の権利を推進する団体の役員で、保守派の言論の自由を否定するような発言をSNSで行っている。

この規制が、残虐な動画など、本当に規制する必要があるものだけを取り扱っているのであればよいが、政治的な意見が対象になる可能性は大いにある。先述の通り、ヨーロッパでは今年の6月に欧州議会の選挙を控えている。有権者に選挙で選ばれたわけではない政府機関が、大きな選挙前に行われる議論を規制することに今から懸念の声が上がっている。

ドイツが「極右」政党支持者の銀行口座を凍結するプランを提示

一方ドイツでは、連邦政府のナンシー・フェーザー内相が、「極右」とみなされる団体や運動に寄付をした人々の銀行口座を凍結する計画を発表している。この政策は、国民の支持が広がっている右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を抑えようとする直接的な攻撃として非難されている。

『Modernity』紙は、フェーザー内相が提唱している「極右」政党の台頭を抑えるためのもう一つの施策についても報道している。

 もう一つの対策は、「早期警戒部隊」と呼ばれる特別部隊の創設である。この機関は「極右の偽情報キャンペーンを探知」し、「偽情報キャンペーン」を発見し、「資金の調達モデルを断ち切る」という。
 フェーザー内相は、「極右政党に献金する者はすべて摘発する」と宣言し、「国家をあざける者は強い国家を相手にすることになる」と付け加えた。
― Steve Watson, “Government Floats Plan To Freeze Bank Accounts Of ‘Right Wing Extremists’ In Germany,” Modernity News, 18 Feb 2024

Another of the measures is the creation of a special unit called the ”early recognition unit” that will “detect far-right disinformation campaigns,” identify “disinformation campaigns,” and “cut their funding models.”
Faeser declared that “No one who donates to a right-wing extremist party should remain undetected,” adding “Those who mock the state must deal with a strong state.”

「ドイツのための選択肢(AfD)」は、2013年に設立され、欧州連合(EU)からの離脱と移民流入規制を掲げて結党された政党である。2017年のドイツ連邦議会選挙で初めて議席を獲得し、以降、地方議会や欧州議会で地歩を固めている。最近の世論調査では、第一党のCDU(キリスト教民主同盟)の30%に次いで第二位となる約20%の支持率を集めている。

一方で、連邦憲法擁護庁からは過激派右翼の疑いがあるとして監視を受けているとされており、規制の対象になる可能性は高い。ただ、国民の20%が支持している政党の資金源を絶つとなると、政治的弾圧の様相を帯びてくる。

以前、カナダで新型コロナワクチンの強制接種に反対したトラック運転手が、首都のオタワで「フリーダムコンボイ」と呼ばれる抗議のデモを行ったことがあった。この時、カナダ政府はトラック運転手やデモの支援者の銀行口座を凍結するという対抗策をとった。今後も、同様の手法で言論を封じる政策がとられる懸念がある。

カナダ

カナダでも、ジャスティン・トルドー首相がインターネット上の言論を規制する「オンライン有害法案」を議会に提出している。

トルドー首相の「オンライン有害法案」

トルドー首相の提出した「オンライン有害法案」に対して、政治ロビー団体「キャンペーン・ライフ・コアリション(CLC)」のジェフ・ガナーソン会長が警戒感を示している。CLCは中絶や同性婚に反対する保守派の団体で、保守派の言論が標的にされるとして次のように語っている。

カナダ国民は、この行き過ぎた法案を懸念すべきだ。典型的な自由党の戦術を使い、善意の目的(ネット上の性的虐待から子供たちを守ること)で国民を口説いて、言論の自由をコントロールする政府の権限を強化しようとしている。
― Clare Marie Merkowsky, “Campaign Life Coalition warns Trudeau’s Online Harms Act would crush free speech, pro-life activism,” LifeSiteNews, 5 Mar 2024

“Canadians should be concerned with this overreaching bill,” Gunnarson warned. “Using typical Liberal tactics, they are trying to seduce the public with well-intended purposes (protecting children from online sexual abuse) and throwing in with it more power for the government to control our freedom of speech.”

法案で提案されている委員会では、オンラインコンテンツに関する苦情に対応するほか、政府が任命した5人の委員がオンラインの言論規制を担当する。この委員会は、SNSなどのプラットフォームを監視し、言論に対する「責任を負わせる」役割を担っている。ガナーソン会長は次のようにも語る。

 最も心配されることは、この新法案によって、性別、人種、セクシュアリティなど、いわゆる「保護されるべきカテゴリー」に入る幅広い対象人物に対して、「差別的」とみなされる「ヘイトスピーチをオンラインで投稿」した場合、誰でもカナダ人権委員会に告訴できるようになることだ。
― Clare Marie Merkowsky, “Campaign Life Coalition warns Trudeau’s Online Harms Act would crush free speech, pro-life activism,” LifeSiteNews, 5 Mar 2024

Most worryingly, the new bill will allow it so that anyone can file a complaint against another person with the Canadian Human Rights Commission for “posting hate speech online” that is deemed “discriminatory” against a wide range of so-called protected categories, notably gender, race, sexuality, or other areas.

この法律に違反した場合の罰則として、2万ドル(2百数十万円)以下の罰金と懲役刑が定められている。このような少数の委員会で、刑事罰につながる言論規制を行うことには不安しかない。

米国

米国では、民主党が議会で多数派となっている州でオンラインの「ヘイト」に対する規制が法制化されつつある。

ワシントン州のヘイト犯罪ホットライン

米国ワシントン州では、最近可決された法案により、早ければ2025年にもヘイト犯罪ホットラインが開通する可能性がある。 この上院法案5427は、民主党が支持して2月28日に州議会を通過した。法案では、司法長官がヘイト犯罪と差別事件のホットラインを開設し、ヘイト犯罪や差別事件の標的となったり、影響を受けたりした人々を支援することになっている。このニュースを報道したFox Newsでは次のように語っている。

司法長官の事務局によると、ヘイト犯罪はワシントン州ではクラスCの重罪とみなされ、最高5年の懲役または10万ドル以下の罰金またはその両方が科せられる。ヘイト犯罪の被害者は、加害者に対して民事訴訟を起こし、弁護士費用とともに最高10万ドルの損害賠償を求めることもできる。
― Lindsay Kornick, “Washington poised to enact hate crime hotline where residents can report bias incidents,” Fox News, 3 Mar 2024

According to the attorney general’s office, hate crimes are considered a Class C felony in the state punishable by up to five years in prison and/or a $100,000 fine. Hate crime victims can also bring civil lawsuits against their perpetrators for damage compensation of up to $100,000 along with attorney fees.

犯罪を取り締まることは必要だが、今は[「神は人を男と女につくられた」と教えるだけで「ヘイトスピーチ」]と言われる(https://seishonews.com/youtube-bans-the-biblical-speech/)可能性がある時代である。このような法律が悪用されたら、聖書信仰に立つ保守的な米国人は迫害の対象になる。

WHOパンデミック条約の「誤情報」規制

以上のような各国の法規制だけでなく、国連機関のWHOでもオンラインの言論規制を定めるパンデミック条約が成立しようとしている。特に重要なのが、WHOが制定しようとしているパンデミック法案による「誤情報」規制である。

パンデミック条約では、パンデミックに関連する「誤情報」「偽情報」は、WHO各加盟国が規制するよう義務付けられている。つまり、WHOの公式見解と異なる発言は規制の対象となるということだ。パンデミック条約と同時期に改定される国際保健規則(IHR)を検討している委員会も、「COVID-19のパンデミックでは、政治的、社会的、文化的なさまざまな情報源から、不正確な誤情報や偽情報が発信され、有意義な公衆衛生上の対応が妨げられた」とし、ソーシャルメディアの規制を訴えている。

MEMO
パンデミック条約による情報規制については、「米国福音派のドブソン博士と元米大統領候補がWHOパンデミック条約に対する警戒を呼びかけ(2)情報統制社会の到来」をご覧いただきたい。

まとめ

以上のようなオンライン言論の規制の特徴は、実際の犯罪行為でなく、言論自体が規制対象になることである。こうした規制は、インターネットの言論空間を為政者の管理下に置き、思想をコントロールするために使用される可能性がある。インターネット空間は良きにつけ悪しきにつけ自由な発言が許される場所であったが、あらゆる発言が監視される監視社会に近付きつつある。

聖書預言

聖書では、終末時代の最後には、反キリストと呼ばれる人物が世界統一政府を統治することが預言されている。それと同時に、黙示録13:16~18では、反キリストの刻印がなければ売ることも買うこともできない完全監視社会が到来することも預言されている。

16  また獣は、すべての者に、すなわち、小さい者にも大きい者にも、富んでいる者にも貧しい者にも、自由人にも奴隷にも、その右の手あるいは額に刻印を受けさせた。 17  また、その刻印を持っている者以外は、だれも物を売り買いできないようにした。刻印とは、あの獣の名、またはその名が表す数字である。 18  ここに、知恵が必要である。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。それは人間を表す数字であるから。その数字は六百六十六である。 

このような社会はまだ完成していないが、現在は、それを可能にするテクノロジーや体制が少しずつ整いつつある時代であると言うことができる。聖書預言は、過去の成就を見れば、将来も成就すると言うことができる。

最後に

預言が与えられている目的

旧約聖書のイザヤ46:5~10では、全地を創造した神が、預言を通して将来に起こることを前もって告げる理由を次のように語っておられます。

5 わたしをだれになぞらえて比べ、わたしをだれと並べて、なぞらえるのか。 6 袋から金を惜しげなく出し、銀を天秤で量る者たちは、金細工人を雇って、それで神を造り、ひざまずいては、これを拝む。 7 彼らはこれを肩に担いで運び、それがあったところに安置すると、それはそこに立ったままである。これはその場所から動かない。これに叫んでも答えず、苦しみから救ってもくれない。 8 このことを思い出し、勇み立て。背く者たちよ、心に思い返せ。 9 遠い大昔のことを思い出せ。わたしが神である。ほかにはいない。わたしのような神はいない。 10 わたしは後のことを初めから告げ、まだなされていないことを昔から告げ、『わたしの計画は成就し、わたしの望むことをすべて成し遂げる』と言う。

ここでは、神から私たちに預言が与えられているのは、聖書の神が唯一真の神であり、それ以外に神はいないことを知るためであると言われています。そのため、厳しい預言であっても、そこには人々が真の神を知る機会が与えられているという恵みの要素があります。聖書の預言を学び、その成就を知ることは、真の神を知るための方法でもあります。

キリストにある希望

使徒ペテロは、紀元1世紀のユダヤ人に向かって「この曲がった時代から救われなさい」(使徒2:40)と語りました。この言葉は、現代に生きる私たちにも語られているように思います。

聖書では、神を知るための預言に加えて、どのような状況でも取り去られることのない希望が語られています。それがイエス・キリストの福音です。福音を信じる者には、すべての罪の赦しと、永遠のいのちが約束されています。キリストにある救いと希望は、すべての人に差し出されています。

参考資料

写真:Image by Moritz D. from Pixabay

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