米国福音派のドブソン博士と元米大統領候補がWHOパンデミック条約に対する警戒を呼びかけ(1)世界統一政府の実現が一歩近付く

WHOの理事会室

現在、WHOでは、将来のパンデミックに対処するために「パンデミック条約1」と呼ばれる国際的な法的枠組みを締結すべく議論と交渉が行われている。この条約は、パンデミックが発生した場合に国際的な協力と行動を強化し、その影響を最小限に抑えることを目的として掲げている。条約の原案(「ゼロドラフト」)は2023年2月に提出され、2024年5月に開催されるWHO総会での採択を目指して現在議論されている。

ただ、このパンデミック条約の危険性を訴える人々がいる。その中の一人が、米国福音派の重鎮、ジェームス・ドブソン博士だ。

米福音派のジェームス・ドブソン博士の警告

ジェームス・ドブソン(James Dobson)博士は、キリスト教の視点から結婚と子育てに関する情報やアドバイスを提供する団体「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」の設立者として知られる。ドブソン博士は、普段は終末論を語る人ではなく、若者の性や家族に関するミニストリーを行っている。しかし、WHOパンデミック条約に対する警戒を呼びかけるために、ニュースレターで次のように語っている。

私は今日、わが国の主権に対する差し迫った現実的な脅威について警告するために、皆さんに手紙を書いています。建国の父であるジョージ・ワシントン大統領とトーマス・ジェファーソン大統領は、アメリカは外国の主体、特に私たちの共和国を形成した理念への忠誠心を共有しない主体と、不釣り合いな同盟を結ばないよう助言しています。しかし、バイデン政権は、私たちの自治の鍵を世界保健機関(WHO)に渡すことで、まさにそれを実行しようとしているのです。そして、もしアメリカが国としての主権を放棄したら、私たちは自由ですばらしい国を失い、祖国のために戦い、死んでいったすべての世代を事実上見捨てることになるかもしれないのです。

I am writing you today to warn of an imminent and real threat to the sovereignty of our nation. Two of our founding fathers, President George Washington and President Thomas Jefferson, counseled America against forming misaligned alliances with foreign entities—especially those who do not share our allegiance to the principles that formed our republic. Yet, the Biden administration is on the verge of doing just that by turning our keys of self-governance over to the World Health Organization. And, mark my word, if America gives up its sovereign rule as a nation, we could well lose our sweet land of liberty and effectively forsake every generation that has fought and died for it.

この文章に続いて、ドブソン博士は米共和党の元大統領候補、ミシェル・バックマン元議員とのインタビューを掲載している。バックマンは、パンデミック条約の危険性について初期から訴えてきた人物だ。

ミシェル・バックマン元議員の警告

バックマン元議員は、パンデミック条約の危険性を次のように訴えている。

 …バイデン政権がやりたいことは、米国の意思決定権を国連に委ねることであり、米国だけでなく、世界の194か国すべてがそうするように仕向けることです。バイデン政権は、各国の医療に関する決定を行う主権を世界保健機関(WHO)に移譲する改定案を提案しています。これは何を意味するのでしょうか。COVIDが流行したこの3年間、地方自治体や州政府、連邦政府が、会社を閉鎖しなければならないと宣言していたことを考えてみてください。私たちはみな、感染拡大を遅らせるために15日間、ドアを閉めて家でじっとしていなければならないと言われました。
…この3年間で、米国政府が国民から付託されて行使した権力は、桁外れで驚くべきものです。会社を閉鎖し、学校を閉鎖し、必要と思っているかどうかに関係なく、人々に予防接種を義務づけました。マスク着用を義務付け、ロックダウン、教会の閉鎖、子供たちの学校の閉鎖を行いました。私が話しているのは、このレベルの緊急事態権限のことです。バイデン政権は、この権限を世界保健機関(WHO)、つまり国連に委ねようとしているのです。

…what the Biden administration wants to do is take United States decision-making authority and give it to the United Nations, and not just the United States, but all 194 nations in the world. The Biden administration is proposing amendments that would transfer the sovereign authority of every nation to make decisions over healthcare, and that decision-making power would transfer to the World Health Organization. What does this mean? Well, just think about the last three years under the COVID pandemic where we saw local governments, state governments, and our federal government make pronouncements that businesses had to close down. We were all told that we had to sit at home with the doors shut for 15 days to slow the spread.
…It is an extraordinary, breathtaking level of power that the United States government took over its people in the last three years—closing down businesses, closing down schools, mandating that people had to get shots, whether they thought they needed them or not. Mandating mask-wearing, lockdowns, mandating that churches had to close, that children couldn’t go to school. This level of emergency power is what I’m talking about, Dr. Dobson, and the Biden administration wants to take that power and give it to the World Health Organization, the UN.

パンデミック条約が成立すると、「人々に予防接種を義務づけ…マスク着用を義務付け、ロックダウン、教会の閉鎖、子供たちの学校の閉鎖」を行う権限をWHOが持つようになるというバックマンの主張は、あまりにも突飛だと思うかもしれない。筆者も初めはそうだった。しかし、調べていくと、バックマンの主張がおおむね正しいことがわかってくる。

WHOにどのように主権が委ねられるか

現状でもWHOの指示は忠実に実施されている

バックマンは、各国の主権が具体的にどのようにWHOに委ねられるかについて次のように語っている。

 ただ、ドブソン博士、こういう話をすると真っ先にこう聞かれます。「ミシェル、どうやって実施されるんだ? 国連がどうやってそういうことを強制できるのか?」それは政治的な意志の問題です。もし米国大統領が、米国の主権を国連に委ねるのを待ちきれないという人なら、大統領がWHOの指示を実行することは目に見えています。なぜそう言えるのかとおっしゃるのなら、過去3年間を振り返ってみてください。世界保健機関(WHO)が出した指示は、米国の疾病管理センター(CDC)が何でも実行してきたではないですか。実際に、企業を見ても、WHOがこうしなさいと言ったことは、そのまま標準になっています。WHOが言えば、実施されました。だから、私たちはすでに体験済みなのです。バイデン政権の下で、すでにそうしてきたのです。

And I’ll tell you Dr. Dobson, the number one thing people ask me when I tell them about this is, “Well, Michele, how will it be enforced? How could the UN possibly enforce that on us?” It’s a matter of political will. If you’ve got the President of the United States who can’t wait to give American sovereignty to the UN, you can know that our President will also enforce the dictates. And how do we know that? Look at the last three years. Whatever the World Health Organization issued, that’s what our American Centers for Disease Control did. In fact, even look at corporations, whatever the World Health Organization told us to do, that was the standard. If the World Health Organization said it, it was enforced. So, we’ve already been there. We’ve already done that under the Biden administration.

バックマンは、パンデミック条約が成立していない現在でも、WHOに強制力があることが証明されていると語っている。ましてやパンデミック条約が成立した暁には、どうなるかは目に見えているという主張だ。ここで、実際にパンデミック条約の規定を少し見てみよう。

パンデミック条約の規定

提案されているパンデミック条約案の第4条には、WHOと各国の主権に関する次のような規定がある。

3.主権 ― 国家は、国連憲章と国際法の原則に従い、自国の政策と法律に従って、公衆衛生、特にパンデミックの予防、医療体制の準備、対応、復旧に対するアプローチを決定、管理する主権上の権利を有している。ただし、自国の法が及ぶ地域または管轄内で行われる活動が、自国民と他国に損害を与えないことが条件となる。

3.Sovereignty – States have, in accordance with the Charter of the United Nations and the principles of international law, the sovereign right to determine and manage their approach to public health, notably pandemic prevention, preparedness, response and recovery of health systems, pursuant to their own policies and legislation, provided that activities within their jurisdiction or control do not cause damage to their peoples and other countries.

この規定の前半では、各国に政策決定の主権があると言っている。だが、後半では「自国民と他国に損害を与えないことが条件となる」と記されている。つまり、自国民と他国に損害が及ぶ場合は、主権が制限されることが明言されている。特に、その国の自国民に損害が及ぶとWHOが判断した場合にも主権が制限されるという条項は、事実上、各国が自国を治める主権をWHOに委譲する規定となっている。

国際保健規則(IHR)の改定

WHOでは、パンデミック条約と同時に、疾病の国際的な伝播を防止することを目的とした国際規則「国際保健規則(IHR)」の改定も進められている。IHRはすでに施行されている規則だが、大幅な改定案が議論されており、今月(2023年5月)開催のWHO総会でも一部改定される予定である。残りのIHR改定案も、パンデミック条約と合わせて2024年5月開催のWHO総会で採択される予定だ。

この国際規則の改定案を見ると、これまで諮問機関であったWHOを実質的な権限を持つ機関に格上げしようという意図が見える。この案では、用語の定義(第1章)に次のような修正を行うように提案している(取り消し線の部分の削除が提案されている)。

恒久的勧告(Standing Recommendation)
「恒久的勧告」とは、第16条に基づき、特定の現在進行中の公衆衛生リスクについて、疾病の国際的な広がりを防止または減少させ、国際交通への影響を最小限に抑えるために必要な日常的または定期的に適用する適切な保健措置に関して、WHOが行う拘束力のない勧告をいう。

一時的勧告(Temporary Recommendation)
「一時的勧告」とは、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に対応して、疾病の国際的な拡散を防止または減少させ、国際交通への影響を最小限に抑えるために、時限的にリスクを特定して適用するために、第15条に従ってWHOが行う拘束力のない勧告をいう。
― “Article-by-Article Compilation of Proposed Amendments to the International Health Regulations (2005) submitted in accordance with decision WHA75(9) (2022)

Standing Recommendation
“standing recommendation” means non-binding advice issued by WHO for specific ongoing public health risks pursuant to Article 16 regarding appropriate health measures for routine or periodic application needed to prevent or reduce the international spread of disease and minimize interference with international traffic;
Temporary Recommendation
“temporary recommendation” means non-binding advice issued by WHO pursuant to Article 15 for application on a time-limited, risk-specific basis, in response to a public health emergency of international concern, so as to prevent or reduce the international spread of disease and minimize interference with international traffic;

ここでは、WHOが行う勧告の定義から「拘束力のない」という言葉を削除することが提案されている。勧告は基本的に拘束力のないもので、それを明確にするために「拘束力のない」という文言が入っていた。これをわざわざ削除する提案をしているということは、WHOの勧告を拘束力のあるものにしようとする意図が明確である。この提案が通ると、WHOの行う「勧告」が強制力のあるものになる。実際に、WHOの国際保健規則検討委員会(IHRRC)は、国際保健規則(IHR)への改定案に関する報告書の中で次のように指摘している(新13条Aに関する意見)。

また、この提案は、15条(訳注:一時的な勧告)と16条(訳注:恒久的な勧告)で扱っている一時的な勧告と恒久的な勧告を義務化するものである。
― “Report of the Review Committee regarding amendments to the International Health Regulations (2005), Report by the Director-General,” 6 February 2023

This proposal also renders mandatory the temporary and standing recommendations addressed under Articles 15 and 16.

また、「これらの提案は、実施的に国家に対して指示を与える権限をWHOに与える(these proposals effectively give WHO the authority to instruct States)」とも語っている(新13条Aの第7項に関する意見)。

聖書が預言している世界になりつつある

この状況を受けて、ドブソン博士はバックマンに次のように語っている。

ミシェル、アメリカは自由な国だという考えはどうなったのでしょうか? 私たちは自分たちで決断し、自分たちの責任で実行するという考えはどうなったのでしょうか? この考えは、たしか聖書でも支持されています。しかし、終末時代には、世界統一政府が現れ、独裁者の承認がなければ人々が売ることも買うこともできないような支配が行われると書かれています。世界全体が支配され、政府の承認がなければ売買もできなくなる世の中になるのです。

Dr. James Dobson: Michele, whatever happened to the notion that we’re a free nation? That we’re able to make our own decisions and carry out our own responsibilities? That is supported in Scripture too, as I recall. That’s where we read that in the last days there will be a one-world government, a dominion that will keep people from buying or selling without the approval of a dictator. Where there will be worldwide dominion and you can’t buy or sell without the approval of government.

ここでドブソン博士は、聖書に記されている終末預言に言及している。しかし、冒頭にも記したとおり、博士は普段、終末論を語る人ではなく、若者の性や家族に関するミニストリーで知られている。このドブソン博士が危機感を抱き、世界統一政府に関する発信を始めたことに大きな意味がある。

MEMO
世界統一政府の預言については、世界統一政府の預言に関する記事をご参照いただきたい。

最後に、博士は同じ福音派の牧師たちに次のように呼びかけている。

福音派教会の牧師には聞いてほしいと思います。何が起きているかに注意を払い、情報を得るようにお願いします。これはクリスチャンが知っておかなければならないことであり、戦わなければならないことなのだと、皆さんの会衆に伝えてほしいのです。これは私の意見です。 私は終末論の権威ではありませんが、これは終末時代に起こることです。言い表すことができないほど私に警戒心を抱かせるものであることを、皆さんに知っておいてもらいたいのです。

I want to speak to the pastors of Evangelical churches out there. I beg you to pay attention, to be informed. To tell your people, this is something Christians must know about and must fight. This is my opinion: I am not an authority on it, but this is end-times stuff. I’m telling you; it alarms me more than I can express.

参考資料

写真:Thorkild Tylleskar (CC BY-NC-SA)

変更履歴

  • 「国際保健規則(IHR)の改定」を加筆・修正してWHOの権限拡大を明確化(2023年5月31日)
  1. 正式名称は「International Treaty on Pandemic Prevention, Preparedness and Response」(パンデミックの予防・準備・対応に関する国際条約)。

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