聖書では、終末時代に世界統一政府が実現することが預言されています。そして、世界統一政府は、聖書の言う「大患難時代」が来る前に樹立されると預言されています。つまり、この世界統一政府が樹立されれば、大患難時代が近付いていることがわかる構造になっています。
「世界統一政府」というと、「陰謀論」というレッテルを貼られることがあります。しかし、世界統一政府の樹立に向かって世界が動いているというのは、陰謀論でも何でもなく、聖書に預言されていることで(ダニエル7:23など)、公開されている資料や証言からもわかることです。この記事では、そのような資料や証言を使って、世界統一政府の樹立に向けた準備が着々と進められていることを示したいと思います。
世界には、世界政府を理想として、その成立を目指している組織がいくつかあります。その中には、世界政府の樹立を目指していることを公言している組織と、公言はしていないがその動きから世界政府を目指していることがわかる組織があります。前者に属する世界的組織の一つが、最初に紹介する「世界連邦運動」です。
> 世界連邦運動世界連邦運動
「世界連邦運動(World Federalist Movement)」は、国際連合では戦争抑止力が低いと考える世界の科学者・文化人たちが、より強力な世界連邦を樹立することで世界から戦争をなくそうと決意し、第二次世界大戦直後に起こした運動です。この運動の賛同者には、バートランド・ラッセル、アルベルト・アインシュタイン、アルベルト・シュヴァイツァー、ウィンストン・チャーチル、湯川秀樹などのノーベル賞受賞者がいます。この運動は、1947年にスイスのモントルーで開催した第一回大会で、以下を活動原則とすることを宣言しています(モントルー宣言)。1
- 全世界の諸国、諸民族を全部加盟させる。
- 世界的に共通な問題については、各国家の主権の一部を世界連邦政府に委譲する。
- 世界連邦法は「国家」に対してではなく、1人1人の「個人」を対象として適用される。
- 各国の軍備は全廃し、世界警察軍を設置する。
- 原子力は世界連邦政府のみが所有し、管理する。
- 世界連邦の経費は各国政府の供出ではなく、個人からの税金でまかなう。
この世界連邦政府では、世界の人々を一部直接支配することがうたわれており(上記3と6)、現在の国連とはかなり性質が異なります。また、各国の軍備を全廃するという原則も打ち出しており、かなり大胆な目標を掲げている運動であることがわかります。
この運動には日本の政治家も多数関わっており、現在の岸田文雄首相もその一人です。そのほかにも、この運動には党を越えて様々な国会議員が参加しています。自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党、社会民主党、無所属と、ほぼすべての政党に会員がいます。2023年6月1日時点の名簿から著名な国会議員を抜き出してみると、次のようなリストになります(敬称略)。2
- 自民党議員(閣僚経験者のみ抜粋):岸田文雄、菅義偉、萩生田光一、細田博之、谷垣 禎一、額賀福志郎、武見敬三、稲田朋美、伊吹文明、加藤勝信、河村建夫、塩崎恭久、下村博文、西村康稔、平井卓也、猪口邦子、後藤茂之、山口壮など
- 公明党:山口那津男
- 立憲民主党:枝野幸男、逢坂誠二、菅直人、松原仁、福山哲郎など
- 日本維新の会:馬場伸幸、鈴木宗男など
- 国民民主党:玉木雄一郎、前原誠司など
- 社民党:福島瑞穂
- 日本共産党:穀田恵二、小池晃、倉林明子など
現職議員の名簿なので今は載っていませんが、2017年1月時点の名簿には現沖縄県知事の玉城デニー氏も名を連ねています。また、日本の外務省にも、世界連邦運動の窓口が設置されています。3
世界統一政府へ向けた動きは、SNSなどで語られる場合、たいてい世界を裏から操っているというネガティブな文脈で語られます。しかし、実際に取り組んでいる人は、必ずしも悪い動機で参加しているわけではなく、むしろ(少なくとも自分としては)善意から取り組んでいる人が多いのではないかと思います。この世界連邦運動も、第二次世界大戦という悲惨な経験を踏まえて、世界政府の下にすべての国を統合すれば平和が来るという考え方に基づいて設立されています。
> ロックフェラー財団ロックフェラー財団
いわゆる「陰謀論」では、「国際金融資本が世界を裏で動かしている」と言われることがよくあります。その国際金融資本の代表格の一つとして挙げられるのが、米国のロックフェラー家です。そのロックフェラー家の中で、戦後の経済と政治の世界で大きな影響力を発揮したのが、チェース・マンハッタン銀行の元会長で、ロックフェラー家の第3代当主、デイビッド・ロックフェラー(1915年~2017年)です。ロックフェラー家をめぐる「陰謀論」と呼ばれる話には荒唐無稽な話も多いのですが、世界統一政府を目指して動いているという部分については、根拠のない話ではありません。それは、デイビッド・ロックフェラーが自身の回顧録で次のように語っているためです。4
1世紀以上にわたり、イデオロギーで凝り固まった過激派は、…広く報道されている事件を持ち出してきては、ロックフェラー家がアメリカの政治・経済団体に過度な影響力を及ぼしていると主張し、攻撃してきた。その中には、私たちが米国の国益に反する秘密結社の一味であると考える人もいる。私たち家族を「国際主義者」と呼び、緊密に統合された世界の政治・経済構造、いわゆる「統一世界(One World)」を構築するために世界中の人々と共謀していると考えているのである。それが私の罪名であれば、私は有罪だ。そして、そのことに誇りを持っている。
For more than a century ideological extremists…have seized upon well-publicized incidents…to attack the Rockefeller family for the inordinate influence they claim we wield over American political and economic institutions. Some even believe we are part of a secret cabal working against the best interests of the United States, characterizing my family and me as ‘internationalists’ and of conspiring with others around the world to build a more integrated global political and economic structure–one world, if you will. If that’s the charge, I stand guilty, and I am proud of it.
このように、デイビッド・ロックフェラーは「緊密に統合された世界の政治・経済構造」「統一世界(One World)」の構築に向けて尽力してきたと語り、世界統一政府の実現のために働いてきたことをみずから認めています。
外交問題評議会(CFR)
上記のような言葉を残したデイビッド・ロックフェラーが、「世界中の人々と共謀」して、「統一世界(One World)」を構築するために利用してきたと言われている組織に「外交問題評議会(Council on Foreign Relations:CFR )」があります。外交問題評議会は、米国の対ソ戦略にも大きな影響を与えた外交・国際政治専門雑誌『フォーリン・アフェアーズ』を発行し、アメリカの対外政策に最も強い影響力を持つとされるシンクタンクです。ロックフェラーは、外交問題評議会のメンバーを1941年から死去する2017年まで務め、1970年~1985年には会長、その後は名誉会長として運営に携わっています。
この外交問題評議会(CFR)が持つ影響力について、CFRのメンバーを20年にわたって務めた米海軍法務総監(軍の法務部門トップ)のチェスター・ワードは、次のように評しています。5
CFRの実権を握る人々が、ある政策を米国政府が採用すべきだと決定すれば、CFRは充実した研究機関を動員して、新しい政策を知的にも感情的にも支持する議論を展開し、反対派を知的にも政治的にも混乱させ、その評価を落とすように働きかける。
Once the ruling members of the CFR have decided that the U.S. Government should adopt a particular policy, the very substantial research facilities of CFR are put to work to develop arguments, intellectual and emotional, to support the new policy, and to confound and discredit, intellectually and politically, any opposition.
また、CFRは世界統一政府を目指していることを明言し、次のように証言しています。6
CFRは、米国の主権と独立を強力な世界統一政府の下に置くことを目標としている。…米国の主権と独立を放棄したくてたまらないという思いは、メンバーのほとんどに浸透している。…CFRの辞書では、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」ほど忌むべき言葉はないのである。
[the CFR has as a goal] submergence of U.S. sovereignty and national independence into an all-powerful one-world government.… this lust to surrender the sovereignty and independence of the United States is pervasive throughout most of the membership.… In the entire CFR lexicon, there is no term of revulsion carrying a meaning so deep as ‘America First’
ビルダーバーグ会議
ビルダーバーグ会議は、オランダのベルンハルト王配(女王の配偶者)の主導で1954年に設立された国際的な会議で、この創設にもデイヴィッド・ロックフェラーが関わっています。この会議は、欧州と米国の有力者が世界の重要問題を完全非公開で話し合う秘密会議です。
英国の財務相、国防相を歴任し、同会議の創設メンバーでもあるイギリス労働党のデニス・ヒーリーは、この会議について次のように語っています。78
世界統一政府の樹立にまい進していたというのは言い過ぎだが、あながち見当違いというわけでもない。われわれビルダーバーグ会議では、無益な戦いや殺し合いを永遠に続けて何百万もの難民を生み出すわけにはいかないと思っていた。それなら、全世界を一つのコミュニティにすればいいのではないかと感じていた。
To say we were striving for a one-world government is exaggerated, but not wholly unfair. Those of us in Bilderberg felt we couldn’t go on forever fighting one another for nothing and killing people and rendering millions homeless. So we felt that a single community throughout the world would be a good thing.
また、デイビッド・ロックフェラーは、1991年にドイツのバーデン・バーデンで開催されたビルダーバーグ会議で次のように語っています。9
私たちは、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、タイム・マガジンなどの出版社の皆様に感謝しています。こうした出版社の取締役の方々は、40年近くにわたってこの会議に出席し、秘密保持の約束を守ってくれました。この間に、この会議のことが報道によって白日の下にさらされていたら、世界に対する計画を発展させることは不可能だったでしょう。しかし、今では世界は当時よりもはるかに洗練され、世界政府に向けて進む準備ができています。知的エリートと世界の銀行家が超国家的な主権を握ることは、過去数世紀にわたって行われてきた国家の自決よりも確実に望ましいものです。
We are grateful to the Washington Post, The New York Times, Time Magazine and other great publications whose directors have attended our meetings and respected their promises of discretion for almost 40 years. It would have been impossible for us to develop our plan for the world if we had been subjected to the lights of publicity during those years. But the world is more sophisticated and prepared to march towards a world government. The supranational sovereignty of an intellectual elite and world bankers is surely preferable to the national auto-determination practiced in past centuries.
このロックフェラーの発言は、情報源が不明であるとして陰謀論と片付けられることもありますが、保守系メディア『The New American』誌によると、同誌の編集者の一人であるヒレール・デュ・ベリエ(Hilaire du Berrier)が情報源を確認しています。10
> 世界経済フォーラム(WEF)世界経済フォーラム(WEF)
もう一つ、世界統一政府に向けて活動していると考えられている組織に「世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)」があります。WEFは1971年にドイツの経済学者クラウス・シュワブが設立した国際機関で、毎年スイスのダボスで開催される総会「ダボス会議」を主催していることで有名な団体です。
ダボス会議
ダボス会議は、各国の首脳を含む、世界のトップリーダーが一堂に会し、世界が直面する重大な問題について議論する場です。著書『文明の衝突』で知られるハーバード大学の国際政治学者、サミュエル・P・ハンチントンは、ダボス会議に出入りする政治家や企業家を「ダボスマン」と呼び、批判的に論じています。ハンチントン教授は、このダボスマンついて次のように語っています。11
ダボスマンは、国家への忠誠心が必要であると思うことがあまりなく、国境はありがたいことに消えつつある障害物だと考える。国家の中央政府は過去の遺物であり、エリートによるグローバルな活動を円滑にすることが唯一役に立つ機能であると考えている。
Comprising fewer than 4 percent of the American people, these transnationalists have little need for national loyalty, view national boundaries as obstacles that thankfully are vanishing, and see national governments as residues from the past whose only useful function is to facilitate the elite’s global operations.
ここでハンチントンは、ダボスマンと呼ばれるエリート集団は「国境はありがたいことに消えつつある障害物」「国家の中央政府は過去の遺物」と考える、つまり現在の主権国家よりも世界統一政府を指向する人々であることを指摘しています。
ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)
世界経済フォーラムは、若手育成のために「ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)」(旧称「グローバル・リーダーズ・フォー・トゥモロー」)という学校を運営しています。この学校は、現在の世界各国で政財界のリーダーとなっている次のような人物を輩出しています。12
・・・注目すべきヤングリーダーには、ジェフリー・ザイエンツ(米国ホワイトハウスのコロナウイルス対応コーディネーター)、ステファン・バンセル(モデルナ社CEO)、ジェレミー・ハワード(影響力のあるロビー団体「Masks for All(すべての人にマスクを)」創設者)、リーナ・ウェン(ゼロコロナを主張するCNNの医療アナリスト)、エリック・フェイグル=ディング(ゼロコロナを主張するツイッターパーソナリティ)、ギャビン・ニューサム(カリフォルニア州知事、2005年選出)、デヴィ・スリダール(ゼロコロナを主張する英国の教授)、ジャシンダ・アーダーン(ニュージーランド首相)、グレッグ・ハント(オーストラリア保健相、元WEF戦略ディレクター)、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、オーストリアのセバスチャン・クルツ首相、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(1993年選出)、ドイツのイェンス・スパーン保健大臣、イギリスのトニー・ブレア元首相(「グローバル・ワクチン・パスポート」の有力な推進者)などがいる。カナダのジャスティン・トルドー首相も、WEFの基調講演を行っている。
In this regard, some notable Young Leaders include Jeffrey Zients (US White House Coronavirus Response Coordinator), Stéphane Bancel (CEO of Moderna), Jeremy Howard (founder of influential lobby group “Masks for All”), Leana Wen (zero-covid CNN medical analyst), Eric Feigl-Ding (zero-covid Twitter personality), Gavin Newsom (Governor of California, selected in 2005), Devi Sridhar (British zero-covid professor), Jacinda Ardern (Prime Minister of New Zealand), Greg Hunt (Australian Health Minister and former WEF strategy director), French President Emanuel Macron, Austrian Chancellor Sebastian Kurz, German Chancellor Angela Merkel (selected in 1993), German Health Minister Jens Spahn, and former British Prime Minister Tony Blair (a leading proponent of ‘global vaccine passports’). Canadian Prime Minister Justin Trudeau has been a WEF keynote speaker.
別の記事では、上記以外にも次のような指導者もヤング・グローバル・リーダーズで学んだと言われています。13
- ビル・ゲイツ(「グローバル・リーダーズ・フォー・トゥモロー」1993年度卒)
- ジェフ・ベゾス(「グローバル・リーダーズ・フォー・トゥモロー」1998年度卒)
- ピーター・ブッティジェッジ(「ヤング・グローバル・リーダーズ」2019年度卒)
この記事では、卒業生の面々について次のようにコメントしています。14
世界190か国以上の政府が、COVID-19のパンデミックに対してほとんど同じように対処し、ロックダウン、マスクの義務付け、ワクチン接種カードが今やどこでも当たり前のように行われているのはなぜだろうか。その答えは、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ氏が設立・運営し、今日の著名な政財界のリーダーが数多く学んだ「ヤング・グローバル・リーダーズ」という学校にあるのかもしれない。
How is it that more than 190 governments from all over the world ended up dealing with the COVID-19 pandemic in almost exactly the same manner, with lockdowns, mask mandates, and vaccination cards now being commonplace everywhere? The answer may lie in the Young Global Leaders school, which was established and managed by Klaus Schwab of the World Economic Forum, and that many of today’s prominent political and business leaders passed through on their way to the top.
この指摘にあるように、世界経済フォーラムで教育を受けた若者が現在、各国を引っ張るリーダーとなっています。WEF創立者のクラウス・シュワブも、ヤング・グローバル・リーダーズで学んだ若者が各国政府の要職に就いていることを認め、次のように語っています。15
私たちが誇りに思うのは、WEFのヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)を出た人々が、世界各国の内閣に浸透していることです。
What we are very proud of, is that we penetrate the global cabinets of countries with our WEF Young Global Leaders. (YGL)
しかし、先述のハンチントン教授は、愛国心の希薄な「ダボスマン」が、今の政財界を動かしている状況に次のような懸念を表明しています。16
今日のアメリカでは、他のアイデンティティとの比較で国民としてのアイデンティティが持つ重要性、そして世界でアメリカが果たすべき役割について、国のエリートと一般大衆の間では大きな意識の開きがある。エリート層はますます愛国心を失う一方で、アメリカの大衆はますます自国の政府に幻滅するようになっている。
In today’s America, a major gap exists between the nation’s elites and the general public over the salience of national identity compared to other identities and over the appropriate role for America in the world. Substantial elite elements are increasingly divorced from their country, and the American public, in turn, is increasingly disillusioned with its government.
ハンチントン教授が「ダボスマン」について指摘した論文を発表したのは2004年のことです。それから15年以上が経ち、ダボスマンと呼ばれた多くの指導者が世界各国のトップに上り詰めている今、世界がどの方向に動いているかは多言を要しません。
> 教育界教育界
世界統一政府に向けた動きは教育界でも見られます。ハーバード大学医学部教授のチェスター・M・ピアースは、国際教育セミナーで、学校教育について次のように指導しています。17
アメリカでは、5歳で学校に入学する子供はみな、精神的に病んでいます。建国の父への忠誠心、選挙で選ばれた議員への忠誠心、両親への忠誠心、超自然的な存在への信仰心、そして独立国家としてのこの国の主権への忠誠心を持って学校に来ているからです。未来の国際的な子供たちをつくり出すことによって、このような病気を患っている子供たちを健康にするのは、教師であるあなた方にかかっているのです。
Every child in America entering school at the age of five is mentally ill because he comes to school with certain allegiances to our founding fathers, toward our elected officials, toward his parents, toward a belief in a supernatural being, and toward the sovereignty of this nation as a separate entity. It’s up to you as teachers to make all these sick children well by creating the international child of the future.
批判的人種理論(CRT)によって、建国の父を奴隷保持者として否定する米国のキャンセルカルチャーも、上記のようなナショナリズムを否定してグローバリズムを推進する学校教育と同じ流れと見ることができます。
> 世界統一政府のひな型としての欧州連合(EU)世界統一政府のひな型としての欧州連合(EU)
多くの人は、欧州連合(EU)を世界統一政府にたどり着くための一里塚、あるいは「ひな型」(実物の模型)と考えています。
米国のニクソン政権とフォード政権で大統領補佐官、国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーは、次のように語っています。18
現代に世界秩序を打ち立てようという探求には、様々な地域に秩序の概念を確立し、これらの地域秩序を互いに関連付ける首尾一貫した戦略が必要だ。
The contemporary quest for world order will require a coherent strategy to establish a concept of order within the various regions and to relate these regional orders to one another.
つまり、キッシンジャーは、世界の各地域にEUのような地域連合を作り、それを互いに関連付けて世界政府を構築しようという構想を抱いています。
また、カーター政権の国家安全保障担当大統領補佐官となった政治学者のズビグニュー・ブレジンスキーは、次のように語っています。19
私たちは、一足飛びに世界統一政府の樹立まで飛躍することはできない。真のグローバル化を実現するための前提条件は、地域統合を徐々に進めることである。
We cannot leap into world government in one quick step. The precondition for genuine globalization is progressive regionalization.
さらに、「EUの父」の一人とされる実業家、政治家のジャン・モネも、次のような言葉を残しています。20
過去の主権国家は、もはや現在の問題を解決することはできず、自らの進歩を保証することも、自らの未来をコントロールすることもできない。…そして、欧州共同体自体は、明日の組織化された世界に至る道のりの一里塚に過ぎない。
The sovereign nations of the past can no longer solve the problems of the present; they cannot ensure their own progress or control their own future… And the European community itself is only a stage on the way to the organized world of tomorrow.
日本でも上記のような考えを持つ人が多数います。冒頭に紹介した世界連邦政府のホームページでは、京セラの稲盛和夫名誉会長が、EUと世界政府の関係について語った次のような言葉が紹介されています。21
EUとは世界連邦政府のひな型のようなものであり、これをさらに拡大させていくにはどうしたらよいかを、世界の為政者たちにぜひ考えてほしいと思うのです。
また、同じページに哲学者の梅原猛氏(国際日本文化研究センター初代所長)の次のような言葉も紹介されています。
人類のめざすべきは、EUのような組織を世界各地につくり、さらにその上に世界連邦政府をつくることではないでしょうか。後、アジアや南北アメリカで、EUを見習って地域共同体創設への動きを加速させるべきだと思います。
このように、多くの人がEUを世界統一政府に向けた第一歩として見ていることがわかります。
> まとめまとめ
世界には、世界統一政府の設立に向けて動いている組織があり、しかも有力な政財界の指導者が推進しています。ここで注目すべき点は、こうした組織や、国際連盟、国際連合といった国際機関が、2つの世界大戦が起きた後に設立されていることです。記事「今はどういう時代か ―時のしるしを見分ける―」で解説したように、聖書の言う終末時代に入ったしるしは「世界戦争」でした。この世界戦争の後に、世界統一政府に向けた動きが出ていることは偶然ではありません。
もう一つ付け加えておく必要があることは、世界統一政府をつくる運動は、主として平和を求める思いから始まったものですが、最終的に出来上がる世界統一政府は、人類史上でも最悪の全体主義体制になると聖書で預言されていることです。確かに世界統一政府は一時的な平和をもたらしますが、最終的には反キリストが世界に圧政を敷く全体主義国家を生み出します。
混乱した世界は強い指導者を求めますが、すべての権力が一人の指導者に集中すると、その指導者次第で世界は天国のような場所にも、地獄のような場所にもなります。欧州連合(EU)の元となる欧州経済共同体(EEC)の設立に貢献し、モネと同じく「EUの父」と呼ばれるベルギー元首相のポール=アンリ・スパーク(1899年~1972年)は、次のように語っています。22
私たちが求めているのは新たな委員会ではない。委員会は十分すぎるほどある。私たちが求めているのは、すべての人の忠誠心を一身に集め、今私たちが沈みつつある経済的な泥沼から救い出してくれる偉大な人物である。そのような人物を送ってほしい。その人物が神であろうと悪魔であろうと、私たちは受け入れる。
We do not want another committee, we have too many already. What we want is a man of sufficient stature to hold the allegiance of all people, and to lift us out of the economic morass into which we are sinking. Send us such a man, and be he god or devil, we will receive him.
聖書は、終末時代に世界政府を治めることになるのは後者であると預言しています。しかし、このような中にも希望はあります。この希望については、別の記事で改めて紹介したいと思います。
この記事を書いた人:佐野剛史
> 参考資料参考資料
- “Globalism in the Present. Part 2 of 3 Globalism Past, Present, Future. Dr. Andy Woods” (https://www.youtube.com/watch?v=t_tThpdbCe8)
改訂履歴:
2024年7月12日:地球連邦運動に参加している国会議員のリストを最新のものに更新
> 脚注脚注
-
Wikipedia「世界連邦運動」(https://ja.wikipedia.org/wiki/世界連邦運動) ↩
-
「世界連邦日本国会委員会名簿(2023年6月1日現在)」(https://wfmjapan.org/wp-content/uploads/2023/06/%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%80%A3%E9%82%A6%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E7%B4%B9%E4%BB%8B202306.pdf) ↩
-
Wikipedia「世界連邦運動」(https://ja.wikipedia.org/wiki/世界連邦運動) ↩
-
David Rockefeller, Memoirs (Random House, 2011), p.405 ↩
-
Admiral Chester Ward, Kissinger on the Couch, (1975), p. 151. ↩
-
同書 pp. 144-150. ↩
-
Wikipedia「ビルダーバーグ会議」(https://ja.wikipedia.org/wiki/ビルダーバーグ会議) ↩
-
William F. Jasper, “Bilderberg-picked EU Leader Van Rompuy Calls for Global Governance With Russia” [December 27, 2012] (https://thenewamerican.com/bilderberg-picked-eu-leader-van-rompuy-calls-for-global-governance-with-russia/) ↩
-
同上 ↩
-
同上 ↩
-
Samuel P. Huntington, “Dead Souls: The Denationalization of the American Elite” [March 1, 2004] (https://nationalinterest.org/print/article/dead-souls-the-denationalization-of-the-american-elite-620) ↩
-
“The WEF and the Pandemic” (https://swprs.org/the-wef-and-the-pandemic/) ↩
-
Michael Lord, “Exposed: Klaus Schwab’s School For Covid Dictators, Plan for ‘Great Reset’ (Videos)” (https://rairfoundation.com/exposed-klaus-schwabs-school-for-covid-dictators-plan-for-great-reset-videos/) ↩
-
同上 ↩
-
“Klaus Schwab: We penetrate the global cabinets of countries with our WEF Young Global Leaders” (https://www.bitchute.com/video/Md4l9RsMwxr5/) ↩
-
Samuel Huntington, “Dead Souls: The Denationalization of the American Elite” [March 1, 2004] (https://nationalinterest.org/article/dead-souls-the-denationalization-of-the-american-elite-620) ↩
-
Chester M. Pierce, Harvard psychiatrist, speaking as an expert in public education at the 1973 Intenational Education Seminar. ↩
-
Henry Kissinger, New World Order (New York: Penguin, 2015), p.371. ↩
-
James Perloff, “Council On Foreign Relations,” 23 Jul 2009 (https://thenewamerican.com/council-on-foreign-relations/) ↩
-
Jean Monet, Memoirs, (New York: Doubleday, 1978), p.594 ↩
-
「世界連邦政府の実現を求めた著名人の言葉」(http://wfmjapan.com/voices/) ↩
-
https://www.christianstogether.net/Articles/319656/Christians_Together_in/Christian_Life/Christians_and_Politics/EU_architect_would.aspx ↩
[…] 第二次世界大戦は、各主要国が保護貿易を行うブロック経済を形成し、植民地の奪い合いが激化して戦争に至ったという認識のもとに、戦後は国際協力と自由貿易を推進する体制が構築された。この時代に、1947年に結成された「世界連邦運動」など、グローバリズム思想に基づいて世界政府を指向するグループや運動が生まれた。また、全世界の労働者の団結を呼びかける共産主義も、グローバリズムを推進する一大勢力となった。こうした流れが、グローバリズムの潮流となって現在まで続いている。 […]
[…] MEMO 詳しくは「時のしるしを見分ける:世界統一政府への動き」を参照のこと。 […]
[…] 第二次世界大戦は、各主要国が保護貿易を行うブロック経済を形成し、植民地の奪い合いが激化して戦争に至ったという認識のもとに、戦後は国際協力と自由貿易を推進する体制が構築された。この時代に、1947年に結成された「世界連邦運動」など、グローバリズム思想に基づいて世界政府を指向するグループや運動が生まれた。また、全世界の労働者の団結を呼びかける共産主義も、グローバリズムを推進する一大勢力となった。こうした流れが、グローバリズムの潮流となって現在まで続いている。 […]