聖書では、終末時代にはイスラエルが国際社会で孤立することが預言されている。そして今は、預言されている状況に国際情勢が近付きつつある時代である。
> 孤立するイスラエル孤立するイスラエル
イスラエルは、イスラム原理組織ハマスの解体を求めて、ガザで軍事作戦を進めている。しかし、この軍事作戦には、イスラム社会を中心に国際社会の非難が強まっている。米国は、こうした中でも国連安保理でイスラエルに一方的停戦を求める決議案に拒否権を発動するなど、イスラエルの側に立って行動してきた。ただ、ガザの死者数が増加していることで、最近では米国もイスラエルに対する批判を強めるようになってきている。
ネタニヤフ政権の転覆を求めるバイデン政権
米民主党は共和党と比べて従来からイスラエルに批判的な立場を取ることが多かったが、バイデン政権でも、イスラエルに対して批判的な姿勢を見せ始めている。英国の『デイリーメール』紙は、バイデン政権の動きについて次のように報道している。
イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフを政権から引きずりおろす方法について、バイデン政権から相談があったことをイスラエルの専門家が証言している。
ハマスによる10月7日のテロ攻撃に対するイスラエルの対応について、この数週間でジョー・バイデン大統領の発言が厳しいものになってきている。
バイデン政権は、ガザでの爆撃や地上作戦によるパレスチナ人の死者数が3万人を超えていることに不満を募らせているのだ。
― Nic White, “Biden Administration consulted Israel expert on how to ‘force the Netanyahu coalition to collapse’ as president accuses the prime minster of ‘hurting Israel more than helping’ and insists Rafah invasion is ‘red line’ that must not be crossed,” Daily Mail, 10 Mar 2024
An Israel expert claims the Biden administration asked them how Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu could be toppled from power.
President Joe Biden has in recent weeks sharpened his rhetoric on the Israeli response to the October 7 terrorist attack by Hamas.
His administration has grown increasingly unhappy with the mounting Palestinian death toll, now at more than 30,000, in Gaza from bombings and ground operations.
バイデン政権にアプローチされたイスラエル専門家は、次のように証言している。
ネタニヤフ連立政権を崩壊に追い込むにはどうしたらよいかと、バイデン政権の重鎮からたずねられたことがある。…彼らは、何を要求すればネタニヤフの連立政権を崩壊させることができるか、そのメカニズムに興味があるようだ。
― Nic White, “Biden Administration consulted Israel expert on how to ‘force the Netanyahu coalition to collapse’ as president accuses the prime minster of ‘hurting Israel more than helping’ and insists Rafah invasion is ‘red line’ that must not be crossed,” Daily Mail, 10 Mar 2024
‘I have been asked by a serious administration figure what it is that will force the Netanyahu coalition to collapse… They were interested in the mechanics, what can we demand which will collapse his coalition.’
バイデン政権はネタニヤフ政権の崩壊を求めているが、今イスラエルは挙国一致内閣となっている。そのため、政権交代はガザの作戦を完了するまでないと思われるが、バイデン政権はすでに次の政権樹立に向けて動いているようだ。
- 3万人という死者数はガザ保健省の発表であり、ガザ保健省はハマスの支配下にある。ハマスは従来から実情と合わない情報を発表することがあるので、信用できる数字かどうかはわからない(例:アル・アハリ病院爆撃事件)。
- ガザ保健省は、死者数のカウントでハマスの戦闘員と市民を区別していない。そのため、死者の中には多数の戦闘員が含まれている。また、ハマス側の発表では、死者の中で戦闘員と一般市民がどれくらいの比率を占めているのかはわからない。
- ハマスは軍事拠点を学校や病院、人口密集地に置くことが多く、ガザの市民が人間の盾にされている。実際に、ガザでの作戦でもハマスが市民を人間の盾にしているという報道がある。
- イスラエル軍は攻撃対象となっている場所の地域住民に事前通告を行っているので、実際に多数の市民が亡くなっているとすれば、ハマスが住民の避難を妨害していることが原因である可能性がある。いずれにせよ、市民の死者数が増加する原因をハマスが作っていることも忘れてはならない。
ユダヤ系のシューマー米上院院内総務が、イスラエルに総選挙の実施を求める
ユダヤ系のシューマー米上院院内総務も、イスラエルの政権交代を求めて総選挙の実施を求めている。AP通信はシューマーの発言を次のように報道している。
米国のチャック・シューマー上院院内総務は、新たな選挙を実施するようイスラエルに求めている。ガザの人道的危機が拡大する中で、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「道を踏み外し」、地域の和平の障害になっているとの見方を示した。
上院初となるユダヤ人の院内総務であり、米国で最も地位の高いユダヤ人高官であるシューマーは、3月14日の朝、上院議場で行った40分間のスピーチでネタニヤフ首相を強く批判した。シューマーは、ネタニヤフ首相は極右の過激派と連立を組んでおり、「その結果、ガザ市民の犠牲を容認し、イスラエルへの支持を歴史的な低水準にまで押し下げている」と語った。
「イスラエルが世界の除け者になれば、イスラエルは生き残れない」とシューマーは述べている。
― MARY CLARE JALONICK and ELLEN KNICKMEYER, “Top Democrat Schumer calls for new elections in Israel, saying Netanyahu is an obstacle to peace,” AP, 15 Mar 2024
Senate Majority Leader Chuck Schumer on Thursday called on Israel to hold new elections, saying he believes Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu has “lost his way” and is an obstacle to peace in the region amid a growing humanitarian crisis in Gaza.
Schumer, the first Jewish majority leader in the Senate and the highest-ranking Jewish official in the U.S., strongly criticized Netanyahu in a 40-minute speech Thursday morning on the Senate floor. Schumer said the prime minister has put himself in a coalition of far-right extremists and “as a result, he has been too willing to tolerate the civilian toll in Gaza, which is pushing support for Israel worldwide to historic lows.”
“Israel cannot survive if it becomes a pariah,” Schumer said.
共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、このシューマーの発言を「不適切」とし、次のように批判している。
中東地域で最も重要な同盟国が存亡を賭けた戦いの中にいる時に、アメリカの指導者がイスラエル政治を分断するような役割を演じるのは、まったく間違っている。
― MARY CLARE JALONICK and ELLEN KNICKMEYER, “Top Democrat Schumer calls for new elections in Israel, saying Netanyahu is an obstacle to peace,” AP, 15 Mar 2024
“It’s just plain wrong for an American leader to play such a divisive role in Israeli politics while our closest ally in the region is in an existential battle for its very survival,” the Republican speaker said.
以前の記事「パレスチナ国家の一方的樹立に向けて動き出すEU、米国、アラブ諸国」でも示したように、米バイデン政権はイスラエルのネタニヤフ政権に対して強硬な姿勢を示し始めている。米国はイスラエルの同盟国で最大の理解者であるが、共和党よりも反イスラエル的である民主党の政権であることもあって、米国政府はイスラエルと距離を取りつつある。
パレスチナ自治政府がイスラエルの国連資格停止を求める動き
パレスチナ自治政府は、イスラエルの孤立化を狙い、国連総会でのイスラエルの資格停止を発議する可能性がある。『エルサレムポスト』紙は次のように報道している。
ラファの軍事作戦を受けて、国連総会へのイスラエルの参加や投票の一時停止や資格停止を求める発議をパレスチナ側が行うだろうとイスラエル政府は見ている。
MAARIV ONLINE, “The Palestinian initiative to suspend Israel from the UN – report,” The Jerusalem Post, 10 Mar 2024
In the aftermath of a military operation in Rafah, Israel assesses that the Palestinians will attempt an initiative that will signify freezing or suspending Israel’s participation in the United Nations General Assembly discussions, as well as its ability to vote in the debates…
このようなパレスチナ側の動きに対して、イスラエルのギラード・エルダン国連大使は次のように語っている。
もしパレスチナ側が本当にイスラエルの国連総会への出席停止を推進するなら、レッドラインを越えることを意味する。そのような事態になればイスラエルは厳しく対応し、エルサレムの国連支部を閉鎖し、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の立ち退きを求め、前例のない措置を取る必要に迫られるだろう。そのため、このような動議に賛成する国は、そのようなことをしてもパレスチナの大義を損なうことにしかならないと悟ることになる。
MAARIV ONLINE, “The Palestinian initiative to suspend Israel from the UN – report,” The Jerusalem Post, 10 Mar 2024
“If they really try to promote the suspension of Israel from the General Assembly, then this would mean crossing a red line and Israel will have to react sharply and take unprecedented steps, such as closing the UN headquarters in Jerusalem, evacuating UNRWA compounds, so that any country that considers supporting this move will know that it will only harm the Palestinian cause.”
米国を含む国際社会が、ガザの作戦を中止するようイスラエルに圧力をかけているが、ネタニヤフ首相は引く気配を見せない。このような姿勢に対し、ネタニヤフ政権に対する批判が国際的にエスカレーションしている。
> 2つのユダヤ社会2つのユダヤ社会
いわゆる「ユダヤ陰謀論」では、ユダヤ人社会があたかも一つであるかのような幻想に立って主張を展開する。しかし、イスラエルへの内政干渉と取れる発言をしているシューマー院内総務の例が示すように、実際はそのようなことはない。少なくとも、ユダヤ人には、イスラエルの国益を第一に考えるナショナリストのユダヤ人と、国境の壁を低くして世界を一つにしようとするグローバリストのユダヤ人がいることを認識する必要がある。
ナショナリストのユダヤ人とグローバリストのユダヤ人
ナショナリストのユダヤ人の代表格には、ベンヤミン・ネタニヤフがいる一方で、グローバリストのユダヤ人の一人に、ジョージ・ソロスがいる。ナショナリストのユダヤ人とグローバリストのユダヤ人は、相反する目標のために動いていることが多い。たとえば、『ワシントンエグザミナー』紙は、ジョージ・ソロスのオープン・ソサイエティ財団が、イスラエルが解体しようとしているハマスを支援する団体に資金援助していることを報じている。
米民主党の大口献金者であるジョージ・ソロスの財団が、パレスチナのテロリストと深いつながりを持つハマス支配下のガザ地区の団体に、過去10年間で少なくとも合計100万ドルの資金援助を行っていることが、開示された財務情報によって明らかになった。
献金先の「アル・メザン人権センター」は、特にパレスチナ自治区で「人権の尊重と保護を促進する」ことを目的とした団体だ。しかし、公の記録は別の事実を物語っている。アル・メザン人権センターは、昨年10月7日のテロ攻撃後にハマスに報復したイスラエルの行動をジェノサイドだと非難し、国連などの機関にイスラエルを調査するよう求めている一方で、テロリストとのイベントを主催し、ハマス、パレスチナ解放人民戦線、パレスチナ・イスラム聖戦と幅広いつながりを持つ人々によって運営されている。
― Gabe Kaminsky, “George Soros pledged $1 million to ‘Hamas propaganda’ organization linked to terrorism,” Washington Examiner, 28 Mar 2024
The philanthropy of Democratic megadonor George Soros has awarded at least $1 million combined in grants over the last decade to a group in the Hamas-controlled Gaza Strip with deep ties to Palestinian terrorists, financial disclosures show.
In its own telling, the Al Mezan Center for Human Rights exists “to promote respect for and protection of human rights,” particularly in Palestinian territories. Public records tell another story: Al Mezan Center for Human Rights, which is accusing Israel of genocide for retaliating against Hamas after its Oct. 7 attack last year and calling on the United Nations and other bodies to investigate the Jewish state, hosts events with terrorists and is led by people with sprawling connections to Hamas, the Popular Front for the Liberation of Palestine, and Palestinian Islamic Jihad.
ソロスの財団「オープン・ソサイエティ」は、全米の大学の反イスラエル活動にも資金援助を行っているとされる。イスラエルは今、外側からも内側からも非難を浴びている状態で、ガザでの作戦を行っている。このように、イスラエルは異邦人(ユダヤ人以外の人々)世界とグローバリストと呼ばれるユダヤ人によって、ますます孤立を深めている。
> 聖書預言聖書預言
聖書では、イスラエルが終末時代に世界で孤立することが預言されている。そのような預言には以下がある。
- ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)(エゼキエル38~39章)
- ハルマゲドンの戦い(ゼカリヤ12章、14章など)
ゴグとマゴグの戦い
聖書では、終末時代にはロシアを中心とする諸国連合がイスラエルを攻撃することが預言されている(「終末預言を読み解く:ゴグとマゴグの戦い(エゼキエル戦争)」参照)。
同時に、イスラエルはこの攻撃に対して一国で立ち向かうことも預言されている。現在、米国が同盟国としてイスラエルに軍事的な支援を行っているが、ゴグとマゴグの戦いでは、米国はイスラエルの側に立って参戦しない。このことから、終末時代が深まるとイスラエルが孤立していくことが読み取れる。
ハルマゲドンの戦い
聖書には、大患難時代と呼ばれる終末時代最後の7年間の終わりに、ハルマゲドンの戦いという世界戦争が起こることが預言されている。このハルマゲドンの戦いでは、イスラエルが世界のすべての国から攻撃を受けることがゼカリヤ12:2~3で預言されている。
2 「見よ。わたしはエルサレムを、その周りのあらゆる民をよろめかせる杯とする。エルサレムが包囲されるとき、ユダについてもそうなる。 3 その日、わたしはエルサレムを、どの民にとっても重い石とする。すべてそれを担ぐ者は、身にひどい傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まって来る。
以上のように、終末時代が終わりに近付くにつれて、国際社会でイスラエルが孤立することは「時のしるし」の一つであるということができる。
> 今後の展開予測今後の展開予測
行きつ戻りつの状況はあるだろうが、聖書預言によると、イスラエルは次第に孤立していく。一方で、ハマスやヒズボラなどのイスラエルに敵対する周辺勢力がイスラエルの安全を脅かすことがなくなることも、聖書預言から予測することができる。エゼキエル38:8で次のように預言されているためである。
8 多くの日が過ぎて、おまえは徴集され、多くの年月の後、おまえは、一つの国に侵入する。そこは剣から立ち直り、多くの国々の民の中から、久しく廃墟であったイスラエルの山々に集められた者たちの国である。その民は国々の民の中から導き出され、みな安らかに住んでいる。
この聖書箇所では、ゴグとマゴグの戦いが起こる時の状況が記されている。ここで「おまえ」というのはマゴグの首長であるゴグを指している。「一つの国」というのが、イスラエルである。そして、「その民は…みな安らかに住んでいる」という描写から、この戦争が起こる時までには、イスラエルの周辺では平和が保たれていることがわかる。そのため、周辺諸国や近隣の武装組織の直接的な脅威からは解放されていると考えることができる。
詩篇122:6には「エルサレムの平和のために祈れ」と言われています。そのため、イスラエルの平和のために祈ることは重要なことです。また、「神は、すべての人が救われて、真理を知るようになることを望んでおられます」(1テモテ2:4)というみことばも忘れてはなりません。クリスチャンの祈りも、神の摂理の中に含まれていると考える必要があります。
> 時のしるし時のしるし
イエスは、マタイ16:2~3で次のように語っている。
2 イエスは彼らに答えられた。「夕方になると、あなたがたは『夕焼けだから晴れる』と言い、 3 朝には『朝焼けでどんよりしているから、今日は荒れ模様だ』と言います。空模様を見分けることを知っていながら、時のしるしを見分けることはできないのですか」
この当時のユダヤ人指導者や多くの民衆は、イエスによって何度も示されていたメシア(救い主)到来の「時のしるし」を見分けることができなかった。
この言葉は、今の私たちにも語りかけられている。イエスは、終末時代の最後にもう一度地上に戻ってくると約束しておられるからである(キリストの地上再臨)。
イエスは、ルカ21:5~28で終末時代に起こることを預言した後、ルカ21:29~31で次のように語っている。
29 それからイエスは、人々にたとえを話された。「いちじくの木や、すべての木を見なさい。 30 木の芽が出ると、それを見て、すでに夏が近いことが、おのずから分かります。 31 同じように、これらのことが起こるのを見たら、あなたがたは神の国が近いことを知りなさい」
イエスは、聖書に記されている「時のしるし」を見分けるように私たちに語りかけている。イエス・キリストが再臨して神の国(千年王国)が到来する時は正確にはわからないが(マタイ24:36参照)、時代の「季節」は見分けることができる。この時代感覚が、自分が歩むべき道が何かを見分ける道しるべとなる。
写真:Michael Kemmerling (CC BY-NC-SA 2.0 Deed)